神の生贄(仮) 母さんはいつも言っていた。
『信じていれば、いつか必ず神さまが助けてくれるからね』と。
その言葉を信じて、おれは毎日神さまに祈った。
暖かい家に住めますように。毎日おいしいご飯が食べれますように。母さんの病気が治りますように。
でも、神さまはおれたちを助けてはくれなかった。
木の枝と紐で作った貧相な十字架。
根元には土が盛ってあるが、雨で崩れ、赤い斑点の浮かんだ腕が飛び出している。
スコップやシャベルなんて無い。枝でひたすらに土を掘り返した。それでも深さが十分では無かったのか、母さんは無残な姿で土に埋もれていた。
「……っ、どうして」
雨で濡れた身体は冷え切っているのに、悔しさで顔がカッと熱くなった。
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