チョコレート魂2月14日、世間は俗に言うバレンタインデー。元は外国の行事であれど、その文化は日本でも浸透している。節分に並ぶ2月の風物詩であり当日日となれば表も裏も関係なく世間は専らその話題で持ち切りだった。
各言う関西系極道組織として名高い天王寺組もその世間の賑わいに乗っかるかのように血なまぐささとは無縁な甘い香りがその日ばかりは事務所内の至る所で漂っていた。
シマの巡回後に帰還するその誰も彼もが皆一様に華やかに梱包された小包を抱え戻ってくる。
守代を貰う店なり近所のご贔屓様なりからか、義理だか本命だか分からない数の荷物を抱えて来る組員の出入りを一瞥し、城戸丈一郎は溜息を零していた。
城戸派に属する舎弟達から見ればあからさまな兄貴分の浮かばれない顔や溜息はバレンタインなんぞに浮かばれている自身達に呆れているか、はたまたそんな組員達の仕事への怠慢を嘆いてるのだろうという解釈であった。が、実際には検討違いである事を知るのは当人のみであった。
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