きみをつれて 我が家の扉を開けると、好きな人が立っていた。
すきなひと。
コイビトとか、パートナーとか、他の呼び方もあるけれど、流川にとって彼はいつまでもずっとシンプルに、すきなひと、だ。
まだ学生服を着ていた頃。ひたすらに長くまどろみの中にあった日中の授業と、またたく間に過ぎ去ってしまう放課後の部活動だけが生活のすべてだった、あの日々からずっと。
ドアを開けてすぐのところに当たり前の顔をして彼が立っていることを、たまに不思議に思う。現実だろうか、と。ここは流川と三井の家だからなんの不思議もないのだけれど。
「おかえり、楓」
やわらかい声とすこしばかりかさついた手に包まれて、頬にくちびるがくっつく。間近で見る三井の口の端が上がり、鼻孔がひくりと動いた。なにか楽しいこと、面白いことを言いたくてうずうずしている表情だ。流川が仕事に行っている間に、今日は何があったのだろう。
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