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    Saha

    こんな辺鄙な所にようこそ(誰も来てないかも)
    らくがき置き場です。あと文字の練習。とってもお試し。

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    Saha

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    ソ生存IF世界の三⇔映画軸の三(リョ三)②

    続いた。これ自分は楽しいが見た人に伝わるのかなあ?😇

    ソ生存IF世界と映画軸の三が入れ替わったリョ三②◆◆◆



    途方に暮れて迷子の犬状態になっている目の前の男に、今までのアレやソレも吹っ飛んで毒気を抜かれる。
    だってあの暗くて冷たい目で罵倒して殴ってきた男が、今にもキューンって言い出しそうな顔してるんだぜ。
    オレにどーしろってんだよ。
    睨みつけたら三井の体がビクリと震えた。

    「……なんか、お前、怖い……」
    「は?」
    「なんかずっとピリピリしてんだよ。オレの知ってるリョータじゃないみてえ」
    「アンタもオレの知ってる三井サンじゃねえけどな」

    姿形は同じでも、中身がまるで違う。それこそ、入れ替わったみたいに…。

    「まさかな…」
    「お前の知ってるオレってどんなだ?」
    「…………。」

    不良の頭で取り巻きいっぱい連れてて、初対面でぶつかってこられて
    こっちから謝ったがすげー失礼なこと言われたから喧嘩を買ったら
    屋上に呼び出されてリンチにあった。
    ちなみにアンタはバスケ部じゃない。
    本当の初対面は違うけど、そこは伏せておく。
    そのまんまを伝えてみたら、三井はポカンとした顔のまま固まっていた。

    「こりゃ夢だな…ハハ…。なんて夢だよ……って、痛えッ!!」

    夢だとか抜かしてる男の頬をつねってやったら、何しやがんだ!!と涙目で睨まれた。
    なんか全然怖くもねえし威圧感もねえ。
    この三井は、少なくとも不良って感じではない。

    「アンタの知ってるオレは?」
    「……すげー優しい。こんな意地悪なコトしねえ」

    頬をおさえながら、じとっとした目で睨みつけられる。
    やっぱり怖くねえ。

    「オレとお前はさ、近所のストバスのコートで会ったんだよな」

    伏せていた『本当の』初対面を出されて、信じられない気持ちで三井を見た。

    「なんかお前に出会った時のこと言うなんて変な感じだな。
    懐かしいなあ、もう3年?4年くらいになるのか?」

    照れくさそうに笑ったその顔は見たことがなかったが、表情が、眼差しがーー
    完全に『あの人』だった。オレの記憶の片隅に押し込めた、キラキラした思い出。

    「小さいのに上手いやつがいるなって思ってよ、一緒に1on1してさ。楽しかったな」

    だが、次に続く展開が違った。あの時オレはあの人の誘いを蹴ったのだ。

    「そんで、お前がバスケが上手い兄貴がいるって言うから」

    続く言葉にドクンと大きく心臓の音が聞こえた気がした。

    「次の約束して、お前がソータを連れてきて」
    「待って」

    冷静な表情とは裏腹に、鼓動が速くなるのを止められない。
    そんなバカな話があるかよ。

    「ん?思い出したか?」

    優しい、慈愛に満ちたような目をして、こちらの頭を撫でてくる『あの人』。
    こんな三井寿は知らない。あのストバスの時以外には。

    「ソーちゃん、生きてるの」

    我ながら馬鹿な質問だと思う。何雰囲気に飲まれてんだ。
    そんなこと、あるわけがない。そんな、夢みたいな……

    「なあ、リョータ。オレも聞きてえんだけど。ソレ、どういう意味なんだよ。
    ソータに何かあったのか?」
    「………先に質問に答えろよ」

    ハア〜とため息を落として、仕方ねえなと三井が折れる。

    「だから、お前がソータを連れてきて一緒にバスケしたろ。
    それからずっと仲いいじゃん俺たち」
    「…………」
    「どうした?」
    「………作り話でも何でもいい………」
    「ハ?」
    「…会わせてよ、そんなにリアルに言うならさあ。
    今ここに!!ソーちゃんを連れてきてくれよ……ッッ」

    平気なフリはできなかった。震えながら俯くオレを三井が抱きしめる。

    「…なあ、オレは言ったぞ。今度はお前の番だろ」

    ポツリポツリと語り始めたオレの言葉に、三井が息を呑む気配がした。
    ソーちゃんが海から帰って来ないこと。
    沖縄から引っ越してきたこと。
    学校にうまく馴染めなかったこと。
    本当はストバスでアンタに会ったけど、ソーちゃんを思い出してバスケできなかったこと。
    でも、アンタがもったいないって言ってくれたからバスケ部に入ったこと。
    高校で再会したアンタはオレのことなんか覚えちゃいなくて、
    因縁つけられて屋上でリンチされたこと。
    言わなくていいことも全部言った気がする。
    だってアンタが、そんな優しい目をするから。
    本当は、誰かに聞いて欲しかったんだな……オレ。

    「何だそれ……嘘だ…ソータ……そんな、嘘だろ?……
    なあ、オレ、最低のクソやろーじゃねーか…」
    「ウン、まあホントひどいよね」

    背中に回された腕にぎゅっと力がこめられる。

    「リョータぁ……ッ!!」

    ずび、と鼻を啜る音が聞こえる。何だ、また泣いてんのか。

    「たとえ夢でも、お前とソータがそんな目に遭ってるなんて耐えられねえよ…!!!」
    「……夢じゃねーし」
    「じゃあ何なんだよ?!絶対おかしいぞこんなの!!」

    別におかしくない、オレにとっては。
    でもこの人にとってはおかしい世界。そして夢じゃない。
    だとしたらーーー
    さっきはあまりに非現実すぎて却下した説が再び頭をよぎる。

    「アンタ、この世界の三井サンじゃねーのかも」
    「ハア?!!」

    そんな何言ってんだお前頭おかしいのか、みたいな目で見んじゃねーよ。
    オレだって馬鹿みたいだって思ってんだよ。

    「だって説明つかないじゃん」
    「いや、そうだけどよ…。そんな漫画みたいなこと現実にあるわけが…」
    「ただいまあ〜〜」

    友達と喋ってたら遅くなっちゃった。リョーちゃん帰ってるの〜?
    話しながらこちらに来た妹は、家を驚く程狭く見せる長身を目の前にして動きを止めた。

    「あ、えと、おともだち…??ハジメマシテ……」

    普段人見知りしない妹にしてはめちゃくちゃ萎縮している。
    でっかい上になんか見た目チャラいもんな、この人。

    「アンナ……」
    「あ、ハイ!」

    ちょっとリョーちゃん!私のこと話したの〜?
    アンナにじとっと睨まれるも、オレはそれどころじゃなかった。
    今、名前言ったよな。

    「悪い、わかんねえのか……」

    ハッと口を押さえながら意気消沈している姿を見て、先ほどの突拍子もない説に真実味が増す。

    「オレ、お前にとって何者でもないんだな…。いや、それどころか」
    「三井サン!!ちょっと外出ましょう」

    ハテナマークをたくさん浮かべているアンナに行ってらっしゃーいと見送られ、
    俺たちは揃って家を出た。

    「なあ、どこに向かってるんだよ…」
    「ウチの壁薄いんす。アイツに変な話聞かせらんないでしょ」
    「…アンナ、オレのこと知らないみてえだった…」
    「ちょっと、何だよその馴れ馴れしさ。アンタの世界でウチの妹に変なことしてねーだろうな」
    「は???するわけねえだろ。オレにとっても妹みてーなもんなのに」

    兄弟ぐるみの付き合いだなんて、その世界のオレとこの人どんだけ仲いーんだよ。

    「なあ、外さみーからウチ行こうぜ。流石にオレの家はあんだろ」
    「………たぶん……?」

    結果、徒歩圏内に三井サンの家はあった。
    ストバスからちょうどオレんちと反対側に同じくらいの距離にある一軒家だった。
    玄関を開けるなり、「ただいまー!友達連れてきたから」
    と大きな声をかけられた三井サンのお母さんらしき人は
    声も出せず固まっていた。
    不良のアンタ、いつもこんなんじゃねーんじゃねえの。大丈夫かよ…。

    本人は全く気にせず二階に上がり、三井サンの部屋と思しき扉を開ける。

    「うわ……」
    「?どうしたんスか?」
    「いや、なんか、何もねえなと思ってよ……」

    10畳くらいはあるだろう広めの部屋には、ベッドと机以外には目立つものが何もなかった。
    確かに、高校生の部屋にしてはまったく生活感がない。
    一応パラパラと散らばる服や小物の感じから三井の部屋ではあるようだった。

    「アンタ不良だから、ちゃんと家に帰ってなかったんじゃねーの」
    「マジかよ……」

    気が抜けたようにベッドに座り込んだ三井サンを見て、オレも床に腰を下ろす。

    「オイ、さみーだろうが。こっちに来いよ」
    「いや、いーっすよココで。ふかふかじゃん」
    「………そうかよ」

    何なのその不満そうな顔。オレ別に間違ってねーよな?

    「なあ」
    「何スか」
    「お前と仲良くなりたかったらどうすりゃいーんだよ」
    「はあ???」
    「だってお前、絶対オレのこと嫌いじゃん」

    まあ、さっき二度と顔見せるなって言ったしな。でも。

    「それはオレの世界の不良の三井サンだから。アンタのことは別に
    好きでも嫌いでもねーよ」
    「………好きになってもらうにはどーすんだよ」
    「ぶふっ」

    好かれたいのか、この男はオレに。
    吹き出したオレを恨めしそうに睨みつける目の前の男は、怖いどころか
    少し可愛らしい。いやいや、今のはなし。

    「オレはアンタの優しい『リョータ』じゃねえよ?」
    「…優しいよ、お前は。だってこんなヒデー事したオレを家に入れて
    普通に喋ってくれたじゃねーか」
    「だってアンタが泣くから……」
    「ホラ、そこだよ。普通そんなの泣きつかれたって放置すんぞ」
    「……あっそ」

    ただ普通に玄関前にいられたら迷惑だったってだけで、
    そんな大した理由なんかねーんだけど。
    この人と話すのは嫌じゃないと思った。
    だってオレへの好意を隠そうともしないから。

    「なあ、お前の話だとここは『お前の世界』ってコトだろ?
    オレって明日普通に学校行ってもいいのかな」
    「うーん、制服着てんだから行ってもいいんじゃねえ?
    オレは学年違うからよくは知らねーけど。あと、アンタはバスケ部にはいなかったよ」
    「うぐっ……そういえばそうだったな。もしかしてオレ、長いことバスケしてねーんじゃねえか?」
    「部活にいないんだからそーなんじゃねえの?」
    「ううっ、情報が足りねえ……っ!とりあえず明日学校に行くか。
    なあ、もう暗いから泊まってけよ」
    「はあ?普通に帰りますけど。近いし」
    「………そうかよ………」

    ものすごく不満そうな顔に思わず吹き出してしまう。
    そしてそんなに気軽に家に泊まったりする仲なのか、とも。
    何というか、全体的に距離感が近いんだよな。
    不意に頭を掠めたありえない説に、冗談のつもりで軽く言ってみる。

    「まさか、アンタとアンタの世界のオレ、付き合ってんの?」
    「ハ???!!!」

    今までで一番の大声を出して真っ赤に茹だったその顔を見て、
    背中に冷や汗が流れた気がした。

    「え、まさか、ホントに………」
    「い、イヤイヤイヤ!!!!ナイナイナイ!!!」
    「だ、だよね……びっくりした」
    「そうだよ!!オレが勝手に好きなだけで……ッ」
    「ハ?」
    「え?」

    今、なんて?

    「いや、ちっ、違う!!!その、人間的なって意味で!!」
    「あ、ウ…ン……??ありがと……?」

    さっきよりもさらに真っ赤っかになった三井サンは
    さっき泊まってけなんて言ったことも忘れたかのように「お前もうさっさと帰れ!!」なんてオレを家から追い出した。
    あの人あの後大丈夫なんかな。家の中でボロ出さずにいれんのかよ。

    今日一日寝たら、あの人はもう消えてんのかな。
    ありえない不思議な1日だった。
    本当はオレは帰ってから寝ちまって、これも全部夢なのかも。
    感覚のある夢なんてあったっけ。
    もし消えちまうんなら、もう少し一緒に居てソーちゃんの話聞きたかったな、なんて思いながら家に帰った。



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