横だっこ。☆ミファーside
「ねえ、足くじいたでしょ」
いつもは優しげな声が怒気を孕んでいる。
ああ、振り向きたくない。
そう思っていてもがしりと尾羽を捕まれてしまう。
「っ!あーいだだっ!」
「ほら、きこえないふりしないの」
しまった、着地のときにくじいたのがばれたか。
リトは嘴や爪も武器として使うが、タイミング悪くて捻挫したのである。
とはいえ、大半歩くことが多いから足のケガはまずいのは百も承知だ。救護所へ行く途中だったが、ミファーには知られたくなかった。なぜなら。
「まったく、また無茶したんでしょ」
そういうとミファーは軽々と足払いをかけ、僕を横抱きにしてしまった。
「や、やめてくれよ。救護所に行く途中だったんだ」
そういってもミファーはふん、といってズンズン歩いていく。
「場所が場所なんだから、下手に歩かないほうがいいよ」
僕より小柄な彼女の横顔はキッとしていた。
いつもの柔和さは消え、救護する者の顔である。
「まったく、弟扱いしないでくれよ」
「あら、シドはこういう無茶はしないけどね」
そういうと水流を地から呼び出し、流れに乗って勢いよく滑り始めた。水を得たゾーラはとかく速い。
リトの大将の悲鳴が長く響いていった。
★リーバルside
闘いが終わり、引き上げてくるときだった。救護活動を終えたあと、目の前がふと暗くなった。
「おっと! 」
地面に激突する前に翼に抱き止められる。
「やだ、ぼーっとしてた」
思わず顔を覆う。気を付けていたはずなのに、うっかりしたところを見せてしまった。
リーバルはあきれた顔をする。
「まったく、君は無茶しすぎ」
そういってためらいながらもリーバルは横抱きにした。突然のことに思わず胸板を押す。
「いいよ、水を出せばすぐに」
行けるから、といってもリーバルはどこ吹く風だ。
「水を呼び出すのだって体力使うんだろう?おとなしく抱っこされておきなよ」
ほらほら、暴れない、といわれてしまう。
なんとなく恥ずかしくて逃れたかったが、大人しく腕に収まった。肌に触れる羽毛の感触がひんやりしていて気持ちいい。
胸元に頭を預けているうちに意識が切れた。
「あれ!寝ちゃったのかい」
リーバルが驚くも、やれやれといってゾーラの控えへと歩いていった。