後をよろしく。プランクブレーンの解明が進んで、ウルトラマンを取り戻すことに成功した遠い未来の日本。「あの惨劇を忘れぬように」と設立されたとある資料館を訪れるリピアーの話。
既にこの時代の世界は、あの恐ろしい獣たちが生物兵器であることも、それらが隕石によって宇宙から運ばれ、今もなお各地で眠っていることも知っている。
生物兵器に対する知見が無かった当時、日本国内の人々は無惨にも故郷や命を奪われた。混乱のさなか、それでも闘い続けた歴史を後世に語り継ぐため、資料館が建てられた。
<星間協定によって、他星への干渉・侵略行為に生物兵器は用いられてきました>
<日本は生物兵器を“禍威獣”と呼称。天災と同列に扱い、恐れを抱きながらも普段の生活を守り続けました>
生物兵器の特徴や当時の暮らしを順序立てて説明する展示が続き、その先で【防災庁 禍威獣特別対策室】の文字を見つける。
<防災庁 禍威獣特別対策室は禍威獣の破壊や、禍災地域の復興を目的に設立された世界初の組織です。国内で5番目に使用された生物兵器を皮切りに、計■体の兵器破壊に貢献しました>
パネルには、禍威獣特別対策室や自衛隊がどのように生物兵器を破壊したのか、指揮系統や対策マニュアル、その後の復興の様子、当時の反省点などがまとめられている。
<職員備品>として防災庁のヘルメットやPC、オレンジ色の腕章、流星を象ったピンバッジ、識別票も展示されていた。
<ウルトラマンの出現と消失を経て、あらゆる外星人が地球を来訪しました。生物兵器を用いて侵略を試みる外星人も多くいる中、禍威獣特別対策室は人々の暮らしを維持する為に尽力しました>
<星間協定によって生物兵器の使用が禁じられたことから組織は解体・再編成が実施されました。職員たちは新組織のほか、禍災地域の復興機関や外星人との交渉機関へと異動しました>
視線を移すと、<禍威獣特別対策室 職員>と書かれたパネルが目に入る。設立初期に在籍していた職員の名前が一覧となって記載されていた。息を呑みながら、その文字列を辿っていく。
<禍威獣特別対策室専従班>
思わず、そこに刻まれた仲間たちの名前に触れる。彼らはしっかりこの星を守り抜き、後世に引き継いだ。それが今もなお息づいている。
嬉しくて、寂しくて胸元に手を当て握る。あの時握りしめた識別票は、体温がうつって僅かに温かかったことを覚えている。
「班長、船縁、滝、浅見くん…神永。」
「…ただいま。」
静かな資料館の中、ひとり呟く声が響いた。