雨の日は傘をおれは今、ナックルのレコードショップで雨に降られている。最近なぜか今の空みたいに気分の晴れない日が続いていて、購入したレコードを濡らさないよう抱きしめながら、店先の庇に落ちる雨音をぼんやり聞いていた。
気分が落ちている原因は、自分でもよくわからない。それが厄介だった。どこからともなく湧きあがっている落ち着かなさから目を背けようと、目蓋を閉じホワイトノイズに耳をすませる。そうしてしばらくシャワーズみたいに意識を水に溶かしていた。
「あれ?ネズじゃん」
突如名前を呼ばれ、聞き覚えのある声の方を見れば、昼休憩だろうか、通りがかりのキバナがそこに居て驚いた。
「もしかして傘ねぇの?」
「……ロッカーが傘なんかさすわけないでしょう」
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