ミルク粥に呪文を「よぉネズ!」
一日の仕事を終え帰路につく途中、オレは見間違いようのない白黒の後ろ姿が歩いているのを発見した。
ナックルで会うとは珍しい。小走りで近づけば、長髪を揺らめかせて緩慢にこっちを振り返る。
「あぁ、キバナですか」
やっぱりネズだ。ネズなのだが。オレは違和感を感じた。発せられた声が妙に優しくて。
「……何、仕事?」
「ええ、仕事でちょっと」
「ふーーん?」
言いながらオレはネズの顔をまじまじと観察した。いつもの無表情ぷりはどうしたのか、不自然ににこにこしている。それに夕日のせいかとも思ったが、顔が赤い気がする。あの精悍なロッカーの棘が全然なくてなんだか全体的にぽわぽわした感じ。差し詰め子供番組のお歌のお兄さんという様子だ。
8356