(水麿天使パロ)君という奇跡 人を羨むのは好きじゃない。『いいなあ』なんて口が裂けても言いたくない。嫉むなんてもってのほかだ。だってそれは、その言葉を宛てる誰かのそこに至るまでの努力も何もかもを軽視している。人は幸せになるべくして幸せになる。水心子はそう思っている。
――だけれど、その言葉が出かかる瞬間は毎日訪れる。高校生の頃から独りぼっちの家への帰り道を辿りながら、吐き出す息が白いのを見ていた。
幼いころに父が亡くなった。それからは母を守るのだと必死に生きてきたというのに、高校時代にはその母も亡くなった。貯めてくれていた預金と自分のアルバイト代で大学生にまでなれたけれど、先に何が見えているでもない。
帰ったってどうせ独りなのだ。温かいご飯なんてない。一緒に食べてくれる人なんていない。
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