あいつのせい晩夏の夕日を背にして、茜色に染まるアパートの一室を俺は眺めていた。正面に見える狭い台所には、夕日の明かりに照らされてぬっと伸びる、黒い、1人分の人型。視線を落とすとダイニングテーブルの上には、俺のために用意された食事と、あいつの汚い字で書かれた1枚の紙切れが置いてあった。
「今までありがとうございました。さようなら。」
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追想
ゾッとするほど真っ直ぐな目で見つめられたあの日から、俺はあいつから妙な距離感を覚えるようになっていた。明らかに返事が素っ気ない。「風呂」と言えば、これまでなら遠慮がちに笑って「準備できてますよぉ」と言っていたのに、最近はこちらを見もせず「いつでも入れますよ」などと生意気な返事をしてくる。叱りつけても、あの目だ。あの目でこちらをじっと見つめてくる。そんなことが、何日か続いていた。
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