まちあわせ 朝のロードワーク中に、それは訪れる。何度事務所で見た光景か、靴紐が切れたのだ。俺は無様にもバランスを崩し、顔面から転ぶ。
「いっつ……」
顔を拭うと、微かに血がついていた。ああ、アイドルなのに顔に傷をつけちまった。これは早く手当しなければ。急いで家に帰ろうとするも、膝もすりむいており、じんじんと痛みを孕んでいて、歩くのがやっとだった。
やっちまったな、と呟きながら、ゆっくりゆっくり家に帰った。よれよれになりながら帰宅し、シャワーを浴びて砂と血を落とし、消毒をする。酷く沁みるのは罰のように感じた。絆創膏をひざと鼻に貼った。鼻のあたまに絆創膏を貼るのは久しぶりだ。
「あ、やべ」
今日はアイツと待ち合わせをしているんだった。とはいえどこかにメシを食いに行こうというだけで、予約をするようなデートではない。ただ時間と場所を決めて、一緒に歩いていこうという、それだけだった。
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