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    pheas357

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    pheas357

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    ↓の続き
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    完結編です、想定外に長い(・ω・)
    当初はケガのために弱気モード入る南が書きたいだったのが、単に苦しめるだけにな…………一応弱気なシーンもありますて(´・ω・`)

    クレヨン云々は以前フォロワーさんのネタにあった「バターにパンを塗る北」からです。

    カプとして意識してはいないですがその辺は左右含めご自由に

    もう大丈夫だから帰ってもいいと言ったのを、少なくとも今夜は付き添うと強硬に主張したネジキに半ば根負けする形になり、それからずっと2人で話している。ちょっとした雑談からポケモンの育成論から、何をどうすれば思いつくのかクレヨンに画用紙を塗る方法から、とにかく2人とも眠くなるまでとりとめなく話し続けた。急な入院になって本でもあればよかったなどと考えていたダツラにとっては退屈しなくてありがたかったが。
    ふと目が覚めて隣の簡易ベッドを見る。寝ているネジキは普段よりいくらか幼い顔に見えた。というよりもこれがきっと年相応なのだろう。
    こんな子供に、一度は焦燥感に満ちた顔をさせてしまったと少しばかり自己嫌悪に陥り、せめてさっきのおしゃべりで少しでも気が晴れていたらと思う。

    またしばらく眠っていたらしく、夜中にもう一度目が覚めた。波があるものなのか、一度は多少和らいでこれなら痛み止めを追加してもらわなくても大丈夫かと思われた激痛が再び襲って来た。
    隣であいかわらず穏やかに眠っているネジキを起こさないように気を付けながら、少しでも楽な体制をとろうとするがたいして効果は上がらない。あげく、姿勢を変えるというよりもただ苦痛にのたうち回るだけになってしまった。
    うっかりベッドの枠にぶつかってしまう。幸いケガの部分からは外れていたものの、大きな音をたててしまった。
    これにはさすがにネジキも目を覚ましてしまう。
    「……?」
    「あ、いや、……ちょっと寝ぼけてた」
    なんとか誤魔化そうと、片手で体を起こしながら出来るだけ普段通りの顔と声を装う。
    ネジキには苦しんでいるところを見られたくない。弱みを見せたくないのではなく、また自分のせいで、と思わせてしまうのが耐えられなかった。
    とはいえ、ダツラ自身もそろそろ限界だった。
    痛み止めを追加してもらうのが一番だろうが、自分で頼みに行くことが出来るような状態ではないし、かといってこちらに呼び出してはネジキにバレてしまうだろう。
    いっそ朝まで我慢して、巡回の時にさりげなく頼めばいいだろうか、と考えながら時計を見て、それまでの時間の長さに絶望的な気分になる。
    せめて昼間のように気絶してしまえば少しは楽になるものを、今は痛みによって意識が遠くなったと思ったらまた痛みによって引き戻されるという繰り返しになっている。この状態では、睡眠によって体感時間を短縮することも出来そうにない。
    不意に右腕の傷に鋭い痛みが走る。さっきから声を抑えていたものの、この不意打ちにはさすがに耐えられず、喉奥から悲鳴のような呻き声がもれる。
    「ダツラさん?!」
    ネジキが叫びながら飛び起きた。
    「痛むんですか?」
    やってしまったと思うがもう遅い。それでもなんとかならないかと必死で言い訳を絞り出す。
    「い、いや……、まあちょっとは痛いけどな、少しくらいはしょうがねえよ……」
    ネジキは黙ってダツラの目を見ている。
    「我慢できねえほどじゃねえんだ、治るまで何日かの辛抱だって……」
    ネジキの顔が少し険しくなった。
    「……ぼくの事、ごまかせるとでも思っているんですか」
    言いながら傍らに置いてあったマシンを手に取ってそのままダツラに向けてかざして
    「全然大丈夫じゃないじゃないですか!」
    叫びながらベッドから下りてこちらへやってくる。
    これ以上ごまかす理由のなくなってしまったダツラは観念した、……というより気力が尽きて崩れ落ちる。
    「ダツラさん!」
    「ねじきぃ……」
    少し舌足らずな声で名を呼ぶ。
    「……も、だめだ…………たすけて……」
    まさかダツラの口からこんな言葉が出るとは思っていなかったネジキは驚きつつとにかく人を呼ぶ。
    「痛いんですか?!」
    もう一度先程と同じことを聞く。なんとか少しだけうなずいたダツラにいくらかこわばった顔をしながら、片手で左手を握り、もう片方の手でゆっくりとさするように頭を撫でる。

    ようやく痛み止めの効果が出てきたのか少しずつ表情や呼吸が穏やかになる。
    内心では安心しつつ、少し険しさの残る表情でネジキはダツラに向かい合った。
    「痛いなら痛いって、もっと早く言ってください」
    「…………」
    「……ぼくを心配させたくなかった、とかですか」
    小さくうなずいたように見えた。
    「……っ、それで……、気遣いのつもりかもしれないですけど、全然、そんなことないですっ……」
    泣きそうな声で、表情をわずかに引つらせてネジキが叫ぶ。
    「……そうだな」
    やっと聞こえるくらいの声で言う。
    「ただ、あんなに泣かせた後に、おめえにまたそんな顔させたくなかっただけで……」
    ネジキの方は見ないで、顔を天井に向けたままなにか堪えるように目をきつく閉じる。
    「おめえがこんなこと望んでないだろうって、分かってたのにな……」
    こういう人だ、とネジキは思う。優しすぎるから、人を思いやりすぎるから、そして強すぎるから。
    もっと仲間に甘えていいのに。自分を甘やかしていいのに。
    「……辛かったら、もっと頼って……、さっきみたいに……」
    ダツラが目を開いてこちらに顔を向ける。
    「……、さっきって?」
    「……?、覚えてないですか?ぼくにたすけてって……」
    記憶をたどってみる。そういえばなんだかあまりの痛みに意識が遠くなった時に、何事か口走ったような気もする。
    「無意識につい出ちゃったなら、きっとそれが本音なんだよ」
    そうなのかもしれない。あんなに苦しいのはごめんだが、それでももしまた痛みが酷くなったら今度こそは、とそこまで考えて、ネジキの手の優しさとあたたかさを思い出す。これなら素直に頼るのも悪くない。
    「ちゃんとよくなるまで、ぼくがここで一緒にいますから」
    そう言ったネジキの方へと手を伸ばす。
    「……ありがとな」
    ネジキの手を握り、ネジキに手を握られる。
    疲れ切ったダツラはそのまま目を閉じた。意識と感覚が閉ざされ、自我も生死すらも曖昧になっていく中、最後まで残り続けたあたたかさに限りない安らぎを覚える。今のダツラにとっては、ただそれだけで幸せだった。
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