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    pheas357

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    pheas357

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    今日って工場長と夜景の日なんです?(なんか違う)

    ほら、シンオウって絶対夜景が綺麗な町あるし、ダイパリメイクの暁には舞台として追加してくれないかなって(*'ω'*)

    CPは有りでも無しでも左右どっちでも。

    所用でシンオウに来ていたダツラと会って話をしていた時に、ネジキはホウエンに戻るのを一日遅らせられないかと聞いた。滞在先から少し離れているが、夜景が綺麗な町があるから一緒に見に行かないかと。以前から気になってはいたものの、今回は寄れないかと思っていたダツラだったが、一日延長するくらいは出来るし、せっかくの機会だからと誘いを受ける事にした。

    町の近くにある小さな山に登って見ようとなったのだが、ダツラが山の様子も見たいと言ったので、かなり早い時間から出かけた。ダツラにとっては、植物も生息するポケモンもホウエンとは違っていて新鮮だった。全体的に整備され、気を付けてさえいれば遭難の心配もほぼ無いのをいい事に、あちらを調べ、こちらを探索し、と、山中を歩き尽くしそうなほどに夢中になっていた。
    ネジキもシンオウに住んでいるとはいえなかなか来る機会のない場所で、一緒になって楽しんでいたのだが、ふと気が付くと、だいぶ日が傾いていた。
    まだ頂上までだいぶある上に、整備されているとはいえ、明るい時間に歩く事を想定された道に灯りは最低限で、これはそろそろ切り上げなくてはと思う。それに、集中していると気付かなかったのだが、ダツラの体力に振り回されたネジキは既にだいぶ疲れていた。歩いて登れると思ったのはただ登る事に専念出来る場合の話で、さすがにこの状態から普通のペースで登るというのは難しい。
    中断させてしまうのは心苦しいが、ダツラに声をかける。それまで何日かシンオウに滞在していたとはいえ、まさかこの人日没時間をホウエンの基準で考えているんじゃないだろうな、という考えがふと頭をよぎる。
    さすがに時間と空の様子を見たダツラはまっすぐに頂上へと歩き始める。ネジキも一緒についていこうとしたが、疲労を自覚した足は思うように動いてはくれなかった。いつもと同じペースで歩いているダツラに追いつこうと走り、余計に疲れて足元があやしくなる。しかもこの辺りはメインの登山道から外れているためにどうしても足場の安定性に欠ける。集中出来なくなったネジキは時々うっかり不安定な岩を踏んでしまい、危うく転びそうになった。
    しばらくそうやっていたところで、もうかなり背中が遠くなっていたダツラが振り返り、慌てたように駆け戻ってくる。ネジキは背筋を伸ばして口を閉じ、なんでもなさそうに見せようとするが、初めの時点でふらついて息が上がっていたのを見られていたため、何も意味はなかった。
    「ネジキ?」
    「だいじょーぶ、つかれただけー」
    喋るとどうしても息が切れてしまう。
    「……ほら」
    ダツラが背を向けてかがむ。疲れ切って思考力の落ちていたネジキは、何も気にせずそのままおぶさった。
    「……悪かったな、気付かなくて」
    立ち上がったダツラは、明らかに先ほどまでよりも速いペースで山道を登り始める。この人、どれだけ体力の塊なんだろうとネジキはなんとなく考えていた。

    山頂から眼下に広がる町を見ている。煌びやかな町灯りと対照的に、自分の周りには何も光がない。空にも月や星は全く見えず、鼻先にあるものも見えない完全な闇だった。
    夜も暗い場所も嫌いではなかったが、目が慣れる事すら許されない、光のない世界に本能的に恐怖を覚える。山を下りれば明るい世界へ行けると分かっているが、この何も手がかりのない暗闇の中を動き回る気にはどうしてもなれなかった。
    それでもすぐ隣にダツラがいる気配だけはある。そっと手を伸ばして触れると、ダツラもこちらに手を伸ばしてきたらしく、肩を抱かれる。これだけ近くにいながら、互いの姿は暗すぎて見えなかった。すぐそばにいるとわかっているのに、触れているのに、どうしても孤独感が拭えない。
    ダツラが何か話しかけてきて、ネジキはそれに答えようとした。

    はっとして顔を上げる。東の空は次第に紺色へと近付いていたが、まだ十分に足元が見えるほどの明るさがあった。今あったはずの光も闇もどこへ消えたのだろうと一瞬考えて、夢を見ていたと結論付ける。
    先ほどよりは回るようになった頭が、ダツラの背に乗せられている事に、多少居心地の悪さを訴える。
    不快なわけではない。だがこのまま頂上に行って人に見られるのはやはり恥ずかしい。降りると言ったが、疲れているだろうと離してもらえなかった。
    実際、まともな思考力や集中力もなくなっていた上に、うっかり眠ってしまうくらいなのだから、自分で思う以上に疲れているのかもしれない。
    夢の中の孤独感がなんとなく残っていたネジキは、諦めて余計な事を考えるのはやめて、ダツラの背に身を預ける。今度は目を閉じてしまわないように気を付けていた。またうっかり眠らないようにではなく、ダツラの姿が見えなくならないように。

    山頂についた頃には、空はだいぶ暗くなっていた。それでも夢の中と違って、周囲にはいくつかの灯りもあり、晴れた空にも少しずつ星が浮かび始める。
    頂上には既に人が大勢集まっていたが、反対側から登ってきたために気付かれる事はなかった。結局ずっとダツラに背負われていたネジキにとっては、誰の注意を引く事もなく、ありがたかった。
    町の灯りが増えていく。オレンジや白といったシンプルな色を彩るように、周囲に様々な色の光が灯される。光を光で彩るような世界が黒々とした海に囲まれ、異世界を少しだけ覗き見るような感覚にとらわれる。
    しばらくそうやって、二人ただ町灯りだけを見続けていたが、不意に海の一点に輝きが現れる。続けてぽつりぽつりと光点が増えていく。周囲の人々がどよめき、ダツラも何事かと問うように隣にいるネジキを見た。
    「あれ?ケイコウオだよー」
    初めから知っていたような口ぶりで答える。
    一つ一つの点は小さな群れらしく、次第に他の点とつながってまるで光の道のようになる。
    時間差でやってくる群れもいるらしく、次から次へと光は増えていく。いつの間にか町を囲むのはのっぺりとした黒い海ではなく、踊るように流れる光の河となっていた。
    「……おめえ、知ってたのか?」
    計算どーり♪とでも言いたげな顔をこちらへと向けるネジキに聞いてみる。
    「水温とか海流のデータからして、今日あたり来そうだなーって思ってたよ。100%確信あったわけじゃないけどー」
    あるところでは明るく輝き、あるところでは消えて夜の闇と一つになる。統制がとれているようにもただ入り乱れるようにも見える動きは、まるでオーロラのようだった。
    ふと上を見上げると、そこには無数の星があった。地上がこれだけ明るいというのになにも妨げられる事なく、満天を覆っている。
    頭上と眼下を光に挟まれ、一瞬ネジキもダツラも自分の立っているのが天か地かわからなくなる。
    どれくらいの時間が経ったのか、少しずつ人が減り始める。自分達もそろそろ山を降りようかと考えて、声をかけようとしたダツラにネジキが寄りかかっていた。そういえば少し前からこの体勢だった気がするが、光の競演に夢中になっていて気にならなかったらしい。
    声をかけたり肩を軽く揺さぶるが、緩慢な反応しか返って来なかった。やはり一日中歩き回って疲れたのだろう。
    ふとイタズラ心を起こして、ダツラはネジキをお姫様抱っこの姿勢で抱えあげる。だが、予想した反応はない。むしろ安心しきったように目を閉じて身をあずけてきた。
    かえって引っ込みがつかなくなって、半ば仕方なくそのままで歩き出す。帰りは暗かったので山道を歩くわけにはいかず、ロープウェイに乗ったが、降ろして椅子に座らせても起きる気配はなかった。
    倒れないように、隣に座って肩を抱きながらもう一度窓の外を見る。幻想の世界から人の日常へと還ってゆく感覚と共に、闇の中から光に満ちた世界へと足を踏み入れるという黄泉の世界へ向かう感覚にとらわれる。
    同時に、まだ見える海を満たすケイコウオの光に、今から行って間近で観察してみたいという考えが浮かぶ。さすがにこの状態のネジキにこれ以上無理をさせるわけにはいかないと思いながら。
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