見守る人たち すぐ傍にある窓から、かつての故郷への道を示しているかのような月光が差し込んでいる。季節としては晩夏の頃であり、風物詩の蝉がそこかしこで己の存在をアピールしている。
こんな光景が見られるようになったのも最近からで、数カ月ほど前は辺り一面に「永遠の魔法」がかけられていた。永遠の魔法は、名の通りかけた場所に永遠を与える。永遠を与えられた場所では、時間が止まったかのように全てのものが変化を拒むようになる。生き物は成長を止めるし、歴史の進行も止まる。割れ物に至っても、場所を移すことこそできるが、落としたってひび一本入らない。永遠は不変も併せ持つからである。未来永劫その姿が変わることはないし、変えることさえできない。
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