余熱「……早く大人になりたいな」

演奏が止まり、ふとそんな呟きが聞こえて、楓は顔を上げた。

隣を見れば、ギターを抱えながら不貞腐れた顔をした七基がいる。
楓がバルコニーで晩酌をしている時にそろりと近場に寄ってきた彼は、演奏したい気分だからとおもむろにギターを弾き始めたのだった。楓は七基のギターの音色を独り占めするという、なんとも贅沢な時間を堪能していたが、この雰囲気の中、彼が突然そんなことを言い出すなんて。

「どうして？」
「だって、子どものままじゃできることが少なすぎるから。……今だって、主任がお酒飲んでるのをただ眺めてるだけだし」
「あはは、お酒がそんなに良いものかはわからないけど……」

楓はカシスオレンジが入った缶をくるくると傾けてみせた。

千百合ちゃんバイク通勤なんだけど、夏場のバイクの熱さにやられて出勤と同時に熱中症でぶっ倒れることが数回ありまして。
亜己ちゃんは遅刻ギリギリマンなのでその場に居合わせるのいつもケンで。
前のめりにぶっ倒れそうになるのを後ろ向きに倒して、サクッと介抱するんですよ。お姫様抱っこで！！！ｗ
そのうえ「脱がすからなー」って言って返事も聞かずにライダースウェア脱がしにかかる。そこに情緒はないw
情緒はないが、脱がし方があまりに手慣れてるので周りの署員から「こいつ…」と思われたりするw

実はケン自身が熱中症かかりやすいので（このへんはいずれちゃんと書く？描く？つもり）異変にすぐ気づくし対処方法もよく心得てる。
ケンが何回か「真夏はバイクやめとけ」って忠告しても千百合は聞きゃしないんだけど、ある日亜己ちゃんが知って本気でお説教される。