「まだショッピングを続けますか?」夜11時、仕事も終わり夕飯もすませ、普段ならくっつきあってぺたぺたいちゃいちゃする夜だが、たまにはこんな夜もいいだろうとキンと冷たいお酒を片手にしたのはどちらだったか。
会話もそれなりに盛り上がり、進む手と少しの苦味が通る喉が作り出したのは真っ赤な顔の大人と大人が肩も腕もぴったりとゼロ距離でくっつきあって、そんな2人を包む雰囲気は綿菓子をちぎっては投げちぎっては投げたようなべたべたするような甘さで、ふわついた空間だった。
これはきっと2人の脳みそも完全に出来上がっている。
「れいとは俺のどこがいちばんすき?」
「…んぅ……ぜんぶ………」
「よくばりだぁ」
この会話に内容はあるのだろうか。
志筑の方に体重もかけ寄りかかる青木の脳みそは既にアルコールのプールに沈み、更には睡魔にちょんちょんとつつかれている最中の様で、先程から寝たり起きたりまた寝たり、ところどころ意識は無い。
一方は、砂糖をじっくりことこと弱火で煮詰めに煮詰めましたとでも言いたいような、蜂蜜もかなわない粘度のある甘ったるい目をして一途に、愛おしいと青木を見つめる志筑。
「俺はれいとのかわいいところと、まぁるいあたまと、きれいなかおと、かっこいいところ、それから、ちいさいくちと、ながいゆびと、まっしろなあしと…」
口を開けばまぁ、吐きそうな程甘い溺愛の言葉がすらすら並ぶ。
ねぇ、ところで志筑さん青木が寝そうなの気づいてる?とツッコミたくなる位にひたすらかわいい連呼し、好きな所というより青木を構成するものを上げ続けていた。
「……ん”…しゅーま、ぅるさい」
「れいと、かわい」
口も回らなくなってきてもお構い無し、
とろとろの呂律であげる志筑による志筑の為のれいとの好きな所プレゼンの幕を閉ざしたのは他でもない青木の唇。
そのまま角度を変えて、開いて、絡んで、このままくっついた所から溶けるんじゃないかと錯覚しそうなくらい甘くてあつくて、そんな2人の夜は結局いつもと変わらない。
ただひとつ違うのは、明日覚めた頭に告げる鈍痛と決済完了の通知が光るスマートフォンだけ。