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    kururarira

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    kururarira

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    昨日フッと思い付いて深夜に勢いでかいたやつ
    誤字脱字は見逃して

    生者必滅的な雑談「思ったんだけどさ、不老不死って意味がないよな。」
    真面目にカチカチとパソコンに返信メールを打ち込んでいたペンギンは、ふっとぼくの方を向いて話した。
    特に何も脈絡なく言ってきたものだから、ぼくは「は?」と返す他無かった。

    「それって、どっかの動画で不老不死やってたぼくに喧嘩売ってる?」
    「いや、そういう訳じゃないんだけどさ……」

    再びパソコンに目線を戻してペンギンはぼそっと言葉を続ける。

    「実際にベニクラゲっていう不老不死の生き物がいるんだが……」
    「え、不老不死って実際にいんの?マジ?」
    「マジ。たしかどっかの動画で紹介しただろ?」

    そんなこともあったような気がする。
    うろ覚えの記憶を引っ張り出しているぼくに目線を戻すことなく、ペンギンは続ける。
    暗い部屋に反してぼうっと光るブルーライトがやけに眩しいなぁと思いつつ、ペンギンの話に耳を傾けた。

    「そのベニクラゲってやつはさっきいったように不老不死なんだ。正確にはある程度成長したらポリプ期という、いわば子供の状態に戻ることが出来る。だから不老不死のクラゲと言われているんだ。まあ不老というか若返りだな。
    ちなみに、ある程度成長したらというのは有性生殖の後のことなんだが、普通のクラゲはこれをした後に………………」

    ペンギンはペラペラ喋りはじめた。
    一度スイッチが入ったら、その脳みそに詰め込まれている知識を満足するまで垂れ流すっていうのはペンギンの悪癖である。その悪癖がうまい具合に作用して、ぼく達を救うこともあるけれど、一介の社畜であるぼく達にはなかなかそんな機会ないし、なくてもいい。
    ただの徹夜続きの雑談であるこの場に、そのマシンガントークは必要ないなぁと思って、適当に聞き流してから、切り出した。

    「雑学はその辺にしておいて、結局どういうこと?」
    「ああ、すまん……
    その不老不死のベニクラゲなんだが、食べられたら普通に死んでしまう。
    彼らが避けられるのは寿命からの死だけであって、完全に不死とは言い切れないんだ。」
    「えっ、マジ?」

    ぼくは、拍子抜けをするついでに心のどこかで納得をした。どこかの動画のぼくには不老不死であるものも少なくはないのだけども、必ず何かしらの対価を払っている。
    例えば、火の鳥と出会ったり、人を中心とした動物を殺しまくったり。まあ後者は不老不死ではない気がするけれど。

    生まれたときから不老不死なやつは、ぼくらみたいに完全な不老不死じゃないんだ。と優越感にも似た何かを抱えながら、ペンギンの冒頭の言葉を思い出し、ふっと思った言葉を吐き出した。

    「でもさ、意味がないなんてことはないと思うよ。
    だってさ、敵から逃げまくりさえすれば永遠に生きてられるじゃん。」
    「まあ、そうなんだがな。俺的には完全な不老不死じゃなきゃ意味がないと思うんだよな。
    敵に怯えながら逃亡を繰り返すって、それって本当に不老不死になったと言えるか?」
    「確かにねぇ……」

    まあ食べられてしまえばそこでおしまいだなんて、それじゃ普通の生き物と変わりないっていうのは分かる。
    でも意味がない、ということはないと思う。どうしてなのかは、多分ぼくの中でもうまく言語化が出来ないけれども、多分、ぼくを含む全生物の憧れみたいなものだと思う。

    「……ふと思ったんだけどさ、不老不死のぼくだって食べられたら終わりだったんじゃないかな?」
    「というと?」
    「別に根拠とかは特にないんだけどさ、たまたまあいつは運が良くって、何にも丸呑みされてなかっただけで、火の鳥から血を分けてもらったって、食べられちゃったら胃液かなんかに溶かされて死ぬんじゃないかなぁ。ベニクラゲみたいに。」
    「そうかもな……」

    ペンギンがぶっきらぼうにそう言ったあとは、静寂だけが残った。
    カチカチ、カチカチとパソコンの音が、さっきまで喋っていたのもあってかやけにうるさく聞こえる。

    「でも、命にストックがあるぼくは、食べられてもひょっこり戻りそうだよね。
    だって、命にストックがあるんだしさ。」
    「そうだな。」

    ペンギンの返事のぶっきらぼう度がさっきより高くなってきたので、しかたがなくパソコンに向かい合う。
    まったく、自分から話を振ってきておいたくせしてひどい男である。
    ぼくは、話を振ってきたペンギンよりも、ぼくが話をするのが楽しくなっていたことにムカついて、八つ当たり気味にキーボードを強く叩いた。

    そのままキーボードを叩いて、叩いて、叩き続けて、そのまま時間が過ぎた。
    目にだるさを覚えて、なんとはなしに、ふっと窓に目線を向けた。そのおかげで朝日が差し込んでいたことに気がついたぼくは、もうそんな時間なのか。と感心を覚えた。
    そして目線を戻すと、目に映ったのは、ペンギンとの話が途切れてからさして量の変わらない書類だった。
    さらに目線をずらして見たものは、ぼくのと同じく対しての量の変わっていない書類と、死にかけな目をしたペンギンだ。

    たまらず、ぼくはペンギンに話しかけたくなった。
    「確かにきみの言う通り不老不死っていうのは無意味かもね。
    例えぼくらが不老不死だったとしても、ブラック企業の仕事はらくらくと終わらせることができないんだからさ。」と。

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