雨に降られて魏の会社、とある一角。仕事をあらかた終え、窓をボーッと見ていた満寵が外の変化に気づき、荀彧と賈詡に声をかけた。
「あ、お二方見てくださいよ。雨が降ってきました。」
「ほぉ、こりゃ結構降ってるなぁ。」
「本当ですね。・・・そういえば、公達殿と郭嘉殿が先ほど外周り終わったので戻ります、と言っていたような・・・。」
「そうなんですね・・・あれ?2人とも、傘とか持ってましたっけ?」
「いや、持ってなかったんじゃないかな?天気予報では曇りって言ってたからね。」
「・・・はぁ、心配ですね。雨に当たって濡れてなければ良いのですが。」
「濡れたら濡れた時の話ですよ。とりあえず、タオルでも用意しておきます?」
「んー、そうだね。一応準備しときますか。」
3人がタオルなどを用意していると、ふとドアが開き、郭嘉と荀攸が濡れた状態で帰ってきた。
「ただいま、3人とも。」
「・・・ただいま戻りました。」
「あ、おかえりなさい。雨に当たったかどうかは・・・言わなくても分かりますね。すっごいビショビショですけど、大丈夫です?」
「大丈夫にみえますか?」
「ははっ、全然見えませんね!」
荀攸と満寵が話をしていると、後ろからやってきた荀彧が荀攸にタオルを渡した。
「満寵殿、そんなこと言ってないで早くタオルとか渡してあげてください。はい、公達殿。」
「文若殿、感謝いたします。」
「郭嘉殿は大丈夫です?」
「私かい?まあ、濡れたけどそんなに大したことはないかな。」
「そんなこと言って、結構濡れてるじゃないか。ほら、風邪引くよ、郭嘉殿。」
そう言うと、賈詡は郭嘉にタオルを渡してあげた。
「ありがとう、賈詡。」
「それにしても、どうしてそんなに濡れて帰ってきたんですか?止み間を見て戻ってこられてもよかったと思うのですが。」
満寵に問われると、荀攸と郭嘉は顔を見合わせて答えた。
「本当はそうしたかったのですが・・・。」
「天気予報を見ると、もうずっと雨が降り続けるっていう予想だったんだ。しかも、結構激しいっていうものだから、ね。」
「それなら、いっそ、今帰ってしまおうかという話になったというわけです。」
「なるほど・・・それは大変でしたね。」
「じゃあ、私と満寵殿は温かいお茶を用意してきますので、少しお待ちくださいね。」
荀彧と満寵はお茶を用意するために一旦部屋から出ていった。
「・・・郭嘉殿。」
「なんだい、賈詡?」
「ちょっと、こっちにおいで。」
「構わないよ。あ、もしかして温めてくれるのかな?」
「んー・・・まあ、あながち間違いじゃない、か。」
賈詡は、大きめのタオルで郭嘉の顔を隠し、こっそりキスを交わすと、郭嘉の耳元で囁いた。
「俺はあんたに風邪をひかれると心配でたまらなくなるんだよ。だから、無理はしなさんな。・・・分かったかい?」
「・・・ずるいなぁ、賈詡は。分かったよ。無理はしない。」
「よし、いい子だ。」
郭嘉が賈詡にすり寄るようにもたれかかってきたので、賈詡が郭嘉の頭を撫でてあげていると、近くから咳払いが聞こえた。
「・・・お二方、仲良くされるのはいいのですが、俺がいることも忘れないでください。」
2人のなんとも言えない雰囲気に堪えきれなくなったのか、荀攸は俺もいますよ、と言わんばかりに思わず2人に声をかけた。
「あぁ、ごめんよ、荀攸殿。」
「あっははぁ!悪かったね。荀攸殿。」
「まあ、構いませ・・・いや構わないこともないのですが・・・というか、賈詡殿に関しては俺がいたの分かってましたよね?」
荀攸の質問に賈詡は少し悪戯っぽく微笑んだ。
「さぁ、どうだかね。」
「その顔、さては知ってましたね・・・やれやれ。」
「荀攸殿、またどこかでいいお酒が入ったら教えてあげるからそれで勘弁してくれないかい?」
「・・・はぁ、仕方ありませんね、今回だけですよ?」
「ありがとう、感謝してるよ。」
3人が話をしていると、荀彧と満寵が温かいお茶を淹れて戻ってきた。
「お待たせしてすみません。今、お茶を入れてきました。」
「荀彧殿がせっかくだから5人で休憩がてら飲みましょうって言ったので、5人分のお茶を淹れてきましたよ・・・ってどうしました、郭嘉殿?頭からタオルを被っちゃって。」
「あぁ、まだ髪が濡れていたようだったから、賈詡が被せてくれたんだ。」
「そうそう、郭嘉殿、意外と濡れてたからね。ほら、風邪引かないようによく拭いておくんだよ。」
賈詡が郭嘉の頭をタオル越しにわしゃわしゃとしているのを、本当の理由を知っている荀攸が何とも言えない顔で見ていた。
「?公達殿、どうされました?」
「あ、いえ・・・何もないですよ。」
「そうですか。あ、では、皆さんお茶を配りますね。」
こうして、5人は温かいお茶を飲んで、つかの間の休憩を楽しんだのであった。