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    hito

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    hito

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    10月の睡煉が書いてたけど間に合うかわからないので突発睡煉ハロウィンSSです。

    いたずら「ハロウィンっていうイベントがあるらしい。知ってるか? 睡骨」
    地獄に落ちて何日、何ヵ月、何年経っただろうか。時間がわからなくなるほど睡骨はここで過ごしている。問いかけてきた目の前の男、煉骨も大差ない。落ちてきたのは向こうが数日、後ではあったが。
    「知ってるぜ。蛇骨から聞いた」
    「なんだ、知ってんのか。つまらねぇな」
    少しだけ口を尖らせて煉骨がそう言う。睡骨が知らないと思って話題をふったのだろうが、ちょうど数日前に蛇骨から話を聞いたばかりのところだった。
    「まあいい。知ってるなら話は早い」
    ふふん、と笑ってそう言うと煉骨は楽しそうな表情を浮かべる。なんだ、と睡骨が思った次の瞬間だった。
    「trick or treat?」
    知ってる男から発せられた流暢な外国語に睡骨は面食らった。言葉の単語とその意図は蛇骨から聞いて知ってはいるが、こんなに美しく発音されるとまるで違った言葉のように聞こえる。呪文のようだ。
    「なかなかうまいじゃねぇか、外国語。話せるのか?」
    「まさか。で、どうなんだ? 菓子と悪戯、選ばせてやる」
    「ずいぶんな言い方だな」
    苦笑しながら懐から包みを取り出す。開いた中には小さなおはぎが一つ入っていた。
    「ほらよ、これでいいんだろ」
    「お前、こんなもの持ち歩いてるのか?」
    「蛇骨から聞いたって言っただろ。あいつに言われた時のために持ち歩いてたんだよ。てめえにやることになるとは思わなかったけどな」
    「なるほどな……」
    納得しながらその場で一口サイズのおはぎを口に放り込む煉骨。それを食べ終わったのを見て睡骨が口を開く。
    「うまかったか?」
    「ん? まあ、そうだな。悪くない」
    「そうか」
    にやりと睡骨が笑う。その笑みに煉骨が疑問を感じた時だった。
    「トリック・オア・トリート」
    睡骨がそう口にする。その言葉を聞いた煉骨は目を丸くした。
    「え……」
    「甘いものの類は持ってるか、煉骨」
    睡骨の言葉にはっとする。何も持ち合わせてなどいない。つまり……
    「持ってねぇなら、悪戯するしかねぇよな」
    そう言って睡骨がぐい、と煉骨の手首を掴む。慌てて煉骨は逃れようとするがすでに遅い。腕ごと体を引き寄せられ睡骨との距離が近づく。
    「ま、まて、睡骨! てめえ……」
    「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇよ。先に仕掛けたのはそっちだろ」
    「まっ……」
    騒ぐ唇を自分のそれでふさぐ。おはぎの甘い味がする。
    呪文を唱えた悪戯はまだ始まったばかり。菓子より甘い行為に耽って、この奇妙なイベントを楽しむとしよう。
    そう思う睡骨であった。
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