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    ao_aktk

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    ao_aktk

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    ファンスク🥞🌟書いてるんですが、
    まだまだ長くなりそうなので、
    プロローグだけ上げようかな、と。
    世界が変われば、出会い方も変わるだろ?
    と勝手に捏造してます。

    ファンスク🥞🌟 プロローグ どんなに世界が変わろうとも、変わらないモノはある。
     それは夢への想いであり、
     そして———……


     春のそよ風が吹く街。
     そんな柔らかなパステルのような淡く優しい季節に、頭を撫でられるような感覚がして彰人は大きく欠伸をした。
     高校の入学式。今日から新たな生活が始まる。とはいえ、心機一転して頑張ろう、などという気持ちもなく、勉強が難しくなるのがかったるいな、と面倒にしか思えずにいた。
     桜の花びらが舞う並木通り。同じ制服を着た生徒たちと同じ方向に歩めば、至る所から会話の声がする。どんな学校なのだろうか、部活は何にしようか、あとは、今注目のアイドルが同じ学校に通うらしい、といった話で持ちきりだ。
     彰人は興味なさげに前を歩く女子生徒たちをさっさと抜き去ると、これから3年間世話になる学校へと踏み入れた。
     神山高校は、数年前にできたばかりの学校で、外観も内観もどこもまだ真新しさが残っている。汚れの知らないガラス戸の出入り口に人だかりができており、彰人も遠目からその様子をうかがった。クラス表を見ようと人が集まっているのだ。人よりも目がいい彰人は、人混みの間から自分の名前、そして相棒の名前を見つけ出すと、小さく舌打ちをした。なんだ、冬弥とは違うクラスなのか、と。
     入学式が終わったら行きつけのカフェに顔を出しに行こう、という約束をしていたので、彰人は『違うクラス。HR終わったら下駄箱前に集合で』と素っ気ないメッセージを送った。文章が多少おかしくても、読書家の相棒ならば行間をしっかり読みとってくれる為、必要以上の情報は送らない事にしている。
     さて、教室に行こうか。
     そう思い、靴を履き替え廊下を歩く。そして、一段、また一段と階段を駆け上がる。どこもかしこも高揚した生徒たちの声が入り混じり雑音となって彰人の耳に入ってくる。きっと、教室も同じように煩いだろう。知り合いを見つけるまで何か音楽でも聴いておこう。
     そう思った時だった。

     ♪———……

    「……?」
     ポロン、と音が聞こえた気がした。
     それは雑踏の中に紛れ、誰も耳にしていない。気のせいと言われたらそうだと言えるほどに小さな音であった。
     しかし、彰人は何故か気になり、2階に位置する教室には目もくれず、上へ上へと足を運んだ。
     上がれば上がるほど人が少なくなり、居なくなった頃には、その音しか聞こえなくなっていた。
     ポロン、ポロン、と廊下に響くのは、紛れもなくピアノの音だった。
     それもかなりの腕の良い、クラシックなどあまり聞いた事のない彰人でさえ、心が震える程に惹かれる音色であった。
     春の小川のようにゆったりと穏やかに流れるような、それでいて、キラキラと暖かな日差しで水面が輝いている、そんな情景が目に浮かぶ。
     まるで春の訪れを喜び、川遊びをしている子供のように無邪気で繊細だ。
     もっとよく聴きたい。
     そう思うと、無意識に足が一歩、また一歩と進み、音の在る場所、音楽室の前へと着いた。
     人にはどちらかと言えば興味が無い方だが、何故か彰人はその音の主が気になり、邪魔をしないようにそっと窓から中を見ようとした。
     それと同時だったろうか。
     鍵盤の上を指が滑り、自然に曲が変わった。
     そして……、
     
    『———La la la la la la la……』

     目の前で泡が弾けたような衝撃を受けた。
     目に映ったのは、ピアノを弾いている男子学生だった。
     彰人はその姿に息を呑んだ。
     春の陽射しに照らされ、まるで神の御加護があるかのように黄色の髪が、陶器のような透き通る肌が、いや、全てが輝いているように見えた。
     その眩しさに目が眩むどころか、彰人は凝視した。瞬きを忘れるほど魅入られた。それはその人の容姿のせいだけではない。
     奏でるピアノの音に合わせ、心を擽るように甘く、そしてどこか爽やかな心地の良いアルトな歌声。きっと音域が広いのだろうとすぐに察せるほど、のびのびとしたスキャット。
     この曲は知っている。
     有名ボカロ曲の"メルト"だ。
     何度も聴いたはずの名曲。
     しかし、まるで初めて聴いたかのような新鮮さがあった。男性の声だからだろうか? それとも、ピアノだから? いや、それだけじゃない……。
     思っていた通り、いや、思っていた以上に丁寧且つ柔らかな声色でメロディーを歌い出す。それはまるで、淡くて繊細な少女が彼に憑依しているかのようだ。
     なんなんだ、この人は……。
     そう疑問に思うも、目も、耳も、釘付けになってしまう。
     今まで沢山の音楽を聴いてきた。確かに、心にクるものは何度かあった。しかし、"あの夜"ほどのモノは今まで聴いたことはなかった。けれど、今目の前に広がる光景、そして歌声は、"あの夜"とはまた違うベクトルの衝撃があった。
     胸を締め付けられるような、それでいて優しく包み込まれるような、なんと表現したら良いのか分からない。
     初めての感覚だ。
     キラキラ輝く彼を見ているだけで、声を聴いているだけで、
     鼓動が高鳴る。

     ——メルト
     ——目も合わせられない
     ——恋に恋なんてしないわ わたし
     ——だって 君のことが……


     瞬間、

     何かが、落ちる音がした……。


    ***
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