ある姉の話「僕は絶対に許しませんよ」
話は終わり、と席を立った僕の目が、男の顔を捉える。……何を途方に暮れたような顔をしている?僕にこう言われることくらい、始めから分かっていただろう。
そう思うと、やはりこの男と話すことなど何も無いように思えた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。話はまだ、……パパ!」
非難するような声が僕の背中に飛んだが、僕は構わずリビングを後にした。
アズール・アーシェングロット。43歳。実業家。
好きなことは子どもたちの成長を見守ることと、朝息子が起きてくる前に妻とコーヒーを飲みながら語らうこと。
好きな食べ物は妻の作る唐揚げ。
愛する女性の夫であり、独り立ちした娘といたずら盛りの息子を持つ父である。
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