雨宿り ぽっかりと空いた穴から糸のような雨が降り続いているのが見えた。
ジャミルはそれを息絶え絶えに眺める。力を使い果たして体を動かすことも億劫だ。
「大丈夫か、カリム」
カリムは、ジャミルと体二つ分ほど離れたところに転がっている。ジャミルよりもその状態は悪く、腹から流れる血は致命傷になりうるほど流れて血溜まりを作っていた。
「おい、返事しろよ」
「……眠っていただけ。大丈夫だ」
「眠るなよ……もうすぐ応援が来るからしっかりしろ。それまで俺と話でもしていよう。いいか?」
「おう」
息を吐くような返事だった。カリムの声は今や微かに聞こえる雨音にすら負けてしまいそうで、それがジャミルの心を忙しなくさせる。
こんな時くらいカリムが喜びそうな楽しい話をしてやろうと思うのに、感情が逆立って大した言葉も出てこない。こいつのことは何でも知っているはずなのに、俺はこんな時に一体、何を言えばいいのだろう。
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