揺らぎ 寝台の前にある篝火が小さくはぜる。それは篝火を寄る辺とする不死が、その火を頼りに渡り歩いてきた印だ。
ゆらめいた火から現れた足が、すとんと床につく。篝火から現れたのは、「薬指」の二つ名を持つ不死――レオナールだった。
ここへは幾度やって来ただろうか。その回数など最早覚えてはいなかったが、やることは一つである。彼は「指」としての務めを果たしに、ロザリアの元へと訪れたのだった。
生まれ変わりの母、ロザリア。深みの聖堂の、通路らしい通路のない奥まった一室に彼女はいる。
レオナールは寝台近くへと歩み寄った。ロザリアは相変わらずで、現れたレオナールに対しても反応はしなかった。何も言わず、寝台の上で虚ろに座り込んでいる。だがそれが彼女というものなので、レオナールは特に気にすることはなかった。
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