真と泉の過去考察心理学で見る真と泉 「愛着障害編」
1.愛着障害とは
2人はそれぞれの行動や言動から愛着障害(アタッチメント障害)と呼ばれる問題を抱えていると考えられる。
愛着障害とは心理学用語で、養育者から何らかの理由で愛を受けられなかった、適切な愛着関係を形成できなかったことなどによる障害の総称。
愛着(アタッチメント)とは生まれながらに備わっているものではなく、成長の過程で周りの人間との関わりを通じて獲得していくもの。しかし人格形成は本人の記憶の有無にかかわらず三歳までに土台ができることや、赤子に話しかけずに育てると喋るまでに通常よりも時間を要する等、子どもにとっての初めての対人となる「養育者」は深い影響を与えることがわかる。
2人は家庭環境こそ違ったが、互いに養育者との愛着関係を形成することができなかった。
愛着障害とは人への愛情の向け方や種類をはじめ、思想や仕事にすら影響を与えてしまう。
そのため、それぞれ別の形で愛着障害を抱えた2人は相手の愛着障害のことは理解できず、しかし子供のころ「自分には彼しかいなかった」という唯一の支えだった存在を無情に切り捨てることもできず、長期間蟠りを解くことも捨てることもできなかったと考えられる。
2.遊木真─家族構成 母
家族に関する発言(時系列順)
真「平気だよ、ちっちゃい子供じゃないんだから。僕、あんまり家族とうまくいってないからさ……」
「家に帰っても息苦しいし、ここで寝泊まりするほうが気楽なの」
(!メインストーリー第三章第五十二話/心配)
真「お母さんがね、今日はお祝いにってご馳走をつくってくれるみたいなんだ」
(ロケットスタート/エピローグ)
泉「……あそこの家のママ、悪いひとじゃないんだけどそういう気遣いが足りないし」(Silent Knights/第一話)
泉「お互い家庭内のトラブルもあったし、だんだん荒んできてたしね」
(SS 努力/第五話)
真「やっぱり家族が応援してくれるって良いよね、うちもお母さんがこっそり見に来ててさ……」
「ほら、たまに電信柱の陰から見てたでしょ?」
真緒「あぁ、あれって真のおふくろさんか……。透き通った肌の美人さんだよな~、お化けかと思ったぞ。ちょっと怖かった」 (SS 友情/第十四話)
真の幼い頃を知る泉から見て「悪いひとじゃないんだけど気遣いが足りない」と思われる真の母親。
「そういう気遣い」とは真がSSが終わった途端ぶっ倒れないように、食事をしてしっかり睡眠をとってもらうことを指している。ブレーキが壊れ気味なら無理をしすぎないか気にかけ、時には代わりにブレーキを踏んでやれるのが気遣いができる人だと思う。
しかし、ライブでの勝利祝いにご馳走を作ったり大舞台を応援に来たりと、愛情がないわけではなさそう。電信柱の陰から見ているなど、距離感や接し方が掴めないのかもしれない。
だが、SSを見に来たりご馳走を作ろうとしたり(真の発言から見るに母親自らの提案)、現在試行錯誤中だと考えられる。
真の方も母親が心配していたことに気づいていたり「すこしは安心させられたかな」と言っていたり、良い方向には進んでいる様子。
愛着形成に問題があったのは幼少期まで遡り、本人曰く「地雷」であるキッズモデル時代。
小学校低学年ぐらいの真はキッズモデルの仕事におそらく一人で臨んでおり、泉は母親が現場にいたことから放置気味だったのかもしれない。真が泣くたびに泉が言葉を尽くして励ましたと真本人が言っている。
真の父親は離婚なのか死別なのか不明だが、そのこともあって母親は自分の仕事で忙しかったのかもしれない。
3.遊木真─「回避型愛着スタイル」
回避型の特徴
・親しくなるのを苦手とする
回避型は、対人関係において距離をおいた対人関係を好む。
親しい関係は重荷に感じやすく、親密になるのを回避するのを避けるために心理的にも物理的にも距離を置こうとする。自立自存が最良、他人に迷惑をかけないことが大事。
・葛藤を避けようとする。
人と衝突することが苦手で、その状況に陥るくらいなら身を引いてでも事態の収拾を図る。
しかし葛藤を抱えられないことは正反対の面を生む。ストレスを生むと短絡的に反応し攻撃的な言動に出てしまいやすい。相手の痛みに無頓着で、相手を傷つけていることに気づかない。冷静に見えて、キレると暴発してしまう。
感情的な認知において鈍感、表情の読み取りが不正確という実験結果もある。
・自己表現が苦手
自己開示を避けようとする結果、自己表現が育ちにくいという事態を招きやすい。
その結果コミュニケーションの機会自体が減ってしまうため、会話での微妙なニュアンスを読み取ることができず意味を取り損ねることも。
上記が関係しているとみられる真の発言や行動
「僕はやっぱりゲームの方が安心できるな~、プログラムどおりに動くし」
「人間はちょっと、予測不可能な反応をするから苦手だよ」
「ちゃんと周りの環境を把握してないと、どんな顔したらいいのかわかんなくなっちゃう」
ゲームをプレイしながら真(当時一年)が呟いた言葉である。Trickstar結成前、ゲー研に昴が遊びに来た時の言葉。
この後Trickstarを組んで真なりに歩み寄っているが、特に春頃はいきなり話題を振られると「えっ、急に話を振らないでっ⁉」と必要以上に焦ったり、転校生と話すとき「お年頃の女の子との会話」という点を異常に考慮する割に「転校生ちゃんも、要領よくない感じだよね~」と人間的に失礼なことを悪気なく言ったりとちぐはぐなところも。
しかし一年時は引きこもってゲームという現状に満足していたが、Trickstar結成後は委員会やクラスメイトとも徐々に関わるようになり、少しずつ成長している。
対泉
真が人間関係で一番苦労しているのは言わずもがな「瀬名泉」である。
拉致・監禁はもちろん泉が悪く、事件後も「ゆうくん監視網」を金で雇ったり「弟」に対する愛情表現が言動行動共に異常だったりするが、真が関係を拗らせる理由を作っていることも実は意外と多い。
① 「何なの、あのひと?けっきょく何が目的だったの?」
モデルに戻ることを泉が勧めたメインストーリーでの台詞。
泉からの辛辣な言葉に傷つくでもなく、かといって「……弟みたいに思ってたのに」と悲しそうに去る泉を気に留めるでもなく心からわからないという風に真が項垂れる。
数々の暴言に怒らないだけ優しいとすら感じるこのシーン。
確かに守りたいにしろ何にしろこの時泉が浴びせた言葉は人格否定のようなものばかりだった。
これに対して
「「Trickstar」は、空っぽだった僕の人生で初めて見つけた宝物なんです」
「僕はもう、心を殺しながら生きていくのは嫌なんです」
と反論。この発言から泉は自分が真を「守れていなかった」ことに気づき、挙句自分は真からしたら「壊した側」だったのだとも気づく。
実装からしばらくは、泉が厳しく真の意思を尊重しない大人と同じだった、という感じを醸し出しており、泉は真への愛をささやくものの具体的に何があったなどは言わなかったため、真の認識が正しいように感じられた。また白と黒のデュエルにて泉を嫌っている理由を転校生に聞かれた際「いつか機会があったら教えるよ」「ちょっとね、過去に色々あったんだ」と茶を濁しており、【DDD 】については転校生も知っていて、また監禁についての話はその話題になると【DDD 】の件、と話しているためキッズモデル時代に別に何かがあると取れる言い方だった。
しかし真が泉と話す中で、過去が明らかになるうちに
「ちいさな子供のころ、泉さんにはお世話になったから」
「僕が泣くたびに、泉さんが言葉を尽くして励ましてくれたからね」
「互いに支えあうような感じで、あのころの僕らはカメラの前で輝いてたよね」
等、泉が原因で揉めた話は出てこず、むしろ真も互いに支え合っていたという認識でいることが判明。
また【DDD 】よりも後、春も終わりごろに真は泉に「仲直りはしていない」「昔から、いつも一方的に絡んでくるだけでしょ?」と嫌そうに言うのだが、泉がその際珍しく本心らしき言葉をぶつけている。
「はぁ?最初に声をかけてきたのは、そっちでしょ?」
「何でもかんでも俺のせいにしないでよねぇ、自分だけ「良い子ちゃん」ぶってさ!」
この言葉より前に泉が真に心の中で懺悔するシーンがあり、キッズモデル時代の話を泉がしているのはメインストーリー時の辛辣な言葉を除くとこれが初めて。
またメインストーリー時は真が辞めたからみんな迷惑している、昔の真は綺麗だった、などと具体的に何があったかはわからなかったため、泉が真にしたことはわからず、発言などから大人と一緒に真の心を削り続けたとすらとれたものの
(泉さんみたいになりたいっていうから、嬉しくっていろいろ教えてさ)
(でも。何かを教えるごとに、ゆうくんは成長した。)
(無邪気な子供から、泥と垢にまみれた薄汚い大人に育っていく……。そんなこと、俺は理解してたのに)
(嬉しくって、我慢できなくて……。止められなくて、何もできなくて)
(ゆうくんが、汚れていくのを見過ごした)
(ううん。俺が、ゆうくんを汚したんだ)
(ごめんね)
と泉が後悔している。泉の言葉からわかる泉の罪は「真にいろいろ教えた」「真が汚れていくのを見過ごした」だけになる。
真にいろいろ教えたことに関しては、泉の記憶だとキッズモデル時代の真も「泉さんみたいになりたい」と発言しており泉の押し付けだけだという可能性は低く、また同ストーリーエピローグにて現在の真も「どうしたら、泉さんみたいになれるのかな」と発言しているため、泉への憧れが多少あるのは今も昔も変わらず泉の記憶も現実と相違のないものだと考えられる。
真が汚れていくのを見過ごしたことに関しては、詳しくは後述するが、真がキッズモデルを辞める前後泉はそもそも真と会っておらず連絡も取っていない。正直見過ごしたことについては泉も家庭のことなどでキッズモデルを続けられなくなっていたため、その状況下で気づくほうが難しいのではないかと思う。
泉が他に何かしてしまった可能性も考えられるが、スターマインにて真が
(泉さんのお陰で、僕も一緒に評価されるようになって……)
(モデルとしては僕も認められた、一時期は泉さんよりずっと褒められてた。でも、そのせいで僕は)
(ううん、泉さんのせいじゃない。このひとには昔から、善意しかない)
(でも、その理由がわかんないから気持ち悪い……。このひと、いったい何を考えてるんだろ?う~ん、意味不明!)
と考えており、互いに泉が真にしたことへの認識の相違はない。
体育祭にて凛月の言葉で泉に向き合えたと言っているため、泉のせいではないと認められたのはスターマインでのことだと考えられるため、以前は泉に何かされたわけではないと真が認めていなかったというのはあるかもしれないが、スターマインでもこのことを直接泉には伝えていない。泉が自責の念に苛まれていることに気づいていないため、伝える必要を感じなかったのかもしれない。
ハロウィンにて泉が、レオに「向こうには嫌われてるけどねぇ?」と話している。
しかし泉はスターマインで真に嫌われていないことを知り、嫌われないために体育祭にて真が許す距離感をはかっていたり(頬ずりしたり肩を組もうとしたり迷走しているが本人は至って真面目)真にしつこくしたら嫌われると何度も自分に言い聞かせたり(結局会いにはいっているが)、少なくとも嫌われていないと思っていたはずである。
それなのに体育祭以降のハロウィンでまた嫌われている、という認識に逆戻りしたのはおそらく「あんたのせいだ」と真に言われたからだと考えられる。
ハロウィンのエピローグで、泉は真のことを「一瞬だけでも守れたと思えた相手」と表現している。
泉は真に謝りたいし償いたいと思っているが、泉は自分の罪が「わからない」のだと思う。
真が自分を拒絶するから真を守れなかったことや汚したことが自分の罪だと思い込むようにしているだけで、本当は泉の中では一緒にモデルをしていた頃は真を守れていたと思っているのではないだろうか。
拒絶されている理由も、一緒にいたとき支えあっていたはずの真の心を壊した片棒を自分が担いでいることになっている理由も、泉本人はきっとわかっていない。
泉本人が、真に悪意をもって何かした覚えがないからだ。
真が泉が自分に甘い理由がわからなかったのと同様、泉も真がなぜ自分を嫌い拒絶するのかわからなかったのだと思う。
でも昔仲がよかったのに自分が考える中で「いろいろ教えたこと」「守れなかった」ことで拒絶され、嫌われた(と思っている)泉が「あんたのせいだ」と言われて「嫌われていない」と思うのは確かに無理だと思う。
真が泉の対等になれなかったのは「真より泉が上だと思っていたから」よりも、泉の献身的を通り越して対象に気味が悪いとすら思わせる自己犠牲の愛し方と初動が悪かったことが組み合わさって何を考えているのか理解できない言動行動をとる意味不明な人になってしまったことが問題だと感じる。
ランウェイ時点で真は泉にキッズモデル時代にお世話になった恩をいつか返す気でいるし、泉の口から自分を愛する理由が「レオの代わりだったのかもしれない」だったとしてもこれからは自分が泉を守ると言っているため、泉の愛自体には誰宛のものであっても自分が愛されたことに変わりはないから報いようとしている。
真が「アイドルの才能がない」と何度も泉が言ったことについて触れているが、ランウェイではそういいつつ「それ以外のこともがんばろうって決めたんでしょ?」と否定ではないとわかることもあり、やはり人格レベルで否定したメインストーリー第五十三話が一番まずかったように感じる。あの時もう少し事情を話しておけばすれ違いもここまでにならなかったろうに。
ランウェイにて、昔から「やればできる子」と言ってくれるのは泉だけだと真が言っており、いつも怯える自分の頭を撫でてくれたような人に突然人格否定されたら、以前のように、もしくはそれ以上に愛されたらわからなくて怖いとなるのも自然である。
キッズモデル時代の真と泉に何があったか明かされないため、何で第五十三話であんな発言をしたのかいまだによくわからない。
ちなみに特に春夏ごろの真は泉を「気持ち悪い」「苦手」とよく言うが、「嫌い」という言葉を使ったのはデュエルで転校生に嫌っている理由を聞かれたときに聞き返したときのみで、真から泉に「嫌い」と言ったことはない。
ハロウィンで対等になりたいと喧嘩を売った泉
② 泉が話しかけたのはメインストーリーが初めてではない。
メインストーリーにて不意に現れて暴言を吐いて去った泉で、嵐のような一連の流れに怒りも悲しみも湧かない真の気持ちもわかるのだが、実はコンタクトを取ろうとしたのは今まで何もなかったのに突然というわけではない。泉と真が夢ノ咲学院に入った後、泉はすぐ真に会いに行っている。
追憶 モノクロのチェックメイトにて。泉が二年生、真が一年生の時。既に泉はレオとユニットを組んでいたわけだが、嵐との会話で
「あぁ、ゆうくんのこと?」
「あの子、うちに入学してきたって知ってる?」
「歩いてたら見かけて驚いたんだけどさぁ、声をかけようとしたら逃げられちゃったんだよねぇ……?」
「あんた同じ学年でしょ、何か知らない?」
「ゆうくんは俺たちと同じでモデルからアイドルに転向したっぽいし、苦労してると思うんだよねぇ?」
「できれば、うちで保護したいな。まぁ今の俺には何の権限もないし、他の連中には煙たがられてるだろうし……」
「むしろ、関わったらあの子に迷惑かけちゃうかもだけど」
「あの子のママの連絡先は知ってるし……電話番号を変えてなければだけど、そっちに事情を聞いてみようかなぁ?」
と心配しながら言っている。真に話しかけられる前に拒否されている。
また【DDD 】の際、真は泉のことだから親のこともうまく言いくるめているのだろうと考えており、連絡を真の母親と泉が取れる状況ではあったことから一年前も連絡はしていると考えられる。
一年前に一回話しかけようとしてそれっきりだったのは、泉の当時所属していたユニットの治安が悪く、また中でも泉とレオは恨みを買っていたため、保護しない方が真にとってよかったから。
余談だが、そもそも真の話になったのは嵐が
「「れおくん」さんと喋ってるときは良い表情をしてるわね。ほんと、昔の泉ちゃんに戻ったみたい♪」
「懐かしいわぁ、当時も今みたいに、ちっちゃい子のお世話とかしてたわよね」
と話しかけ、それに対して
「あぁ、ゆうくんのこと?」
という流れなので、泉はレオの代用品はないこともわかる。
何故真が泉に強く当たってしまったか
① 何気に一番親しいのが泉だったから
② 多少強く言っても傷ついているのがわからないから
③ 泉が「愛着障害の傷を修復する」役割をたまたま担ってしまったから
④ 怒りが赦しに変わったから
① 何気に一番親しいのが泉だったから
親しい、と言う方が適切かはわからないが、真にとって一番遠慮が
Trickstarよりも、というより真はキッズモデル時代のことが今の性格に大きく影響を与えているため、その後に出会ったTrickstarとの距離は本人が望まなくても空いてしまっていた。
その点泉は、真が心を殺すしかなくなってしまうよりも前からの付き合いで、泉自身から何かされたわけでもなかった。それどころか泣いていたら限りを尽くして励ましに来る、泉だけが「やればできる子」と言ってくれるなど、泉が唯一最大の味方だったため「このひとなら大丈夫」という気持ちが無意識にでもあったのではないかと考えられる。言い方を変えると「甘えていた」のである。
嘘の笑顔でも最高の値段で買い取ってくれる、それが気持ち悪いけどちょっと安心した、誰かに面と向かって好きだと言ってもらえるだけで無限のパワーが湧いてくる→ようやくそれを理解したよ
「ごめんね。ありがとう。僕、いつでもお兄ちゃんに甘えてばっかりだったね」
リメンバー 真夏の夜の夢のエピローグにて泉に真が初めて本心らしい本心を伝えた場面。
(ハロウィンで泉に甘えないことに拘りすぎて立ち上がる時に手を借りようとしなかったので、ハロウィンがいかに本気で自分たちの関係を変えようとしていたかがわかる。)
余談
Trickstarは「名字+くん」呼びだが泉だけキッズモデル時代に「泉さん」と呼んでいたことがあるのでそのまま「泉さん」呼びで、またキッズモデル時代「お兄ちゃん」と呼んでいたこともありたまにそう呼ぶこともある。
真が名前で呼んでいるのは、泉の他は凛月と忍(委員会の後輩)だけで、凛月の方は本人に凛月でいいと言われ呼び方を訂正している。忍に関しては最初から名前呼びなものの、特別仲が良い描写も特にないため、初期の設定ミスだと思われる。
② 傷ついているのがわからないから
泉が何を言ってもあのテンションのためわかりにくいというのもあるが、真自身が極端に感情に疎いため。甘えている上にわからないので長期間関係を見直すこともしなかったと思われる。
凛月に泉への対応を「泉を傷つけたいだけならこの上なく効率的」と言われて以降は、反射的に気持ち悪いと言うことがほぼ無くなり、体育祭で手を繋ぐ、肩を組むという泉の提案などもしっかりと理由を説明して断るようになっている。
③ 泉が「愛着障害の傷を修復する」役割を担ってしまったから
愛着障害とは、友人や恋人などと関わるうちに傷が修復されていくケースもある。
しかし、そもそも愛着障害は「養育者」からの愛着を基礎とするため愛着障害の修復には周りの辛抱と広い心が必要になってくる。
愛着障害の修復過程には親が子供にしてあげることの再現も多い。「布団を並べて寝る」「抱っこ」すらも過程に入る。
幼い頃に得られなかった愛情を今与えてもらうことで、傷を修復していくのだ。
真は「お母さんがご馳走を作ってくれる」ことに喜び、そのために「さっさと面倒なことは片づけて帰って休みたいんだけど……♪」と普段使わないような言葉を使って意思表示までしている。そしてその後に泉の態度が昔に戻り、泉も甘やかし体制に入る。
では何故実の母親ではなく、泉が修復の役割を担うことになったか。
この修復が行われていく過程では「突き放す」「真面目に受け取らない」「怒る」などをするとまた殻に籠ってしまい、振り出しに戻るよりさらに悪い結果になってしまう。
加えて真の母親と真は、あまりコミュニケーションをとっていない、真が母親に心配をかけていることを長期間申し訳なく思っていたことから、後に母親が修復する役割を担うこともあったかもしれないものの、その段階でまだ母親は修復を手伝うには適任ではなかったと考えられる。そしてその状態で泉が存在しており、また泉の対応は修復的な意味では「正解」だったので、偶然とはいえ真の愛着障害を手伝ったことになる。
④ 怒りが赦しに変わったから
過去の傷と向き合ううちに、一定の時期からある変化が見られるようになる。
対象(養育者)についての否定的なことを語りつくすと、楽しかった経験や自分に注いでくれた愛情、よくしてくれたこともあった……など良かった面と向き合えることができるようになってくるのだ。悪い点や至らない点があっても、養育者は養育者なりに努力して愛してくれていたのだと思えるようになる。
泉は真の親ではないが、主に撮影現場では「養育者」がすべき行動をしており、泉が真の「養育者」に該当する部分が存在する。
そうすると、過ごしていくうちに泉を「赦せた」という説明がつく。