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    スタスカファ二本

    2本目はギャグで他カプ描写あり
    コンマイ、サン音、アススカ なのにスタスカファはまだくっついてない😊
    —————— —————— ——————

    スタスカファ文字まとめ①スタスカファ イチャイチャ

    淡い青空を見上げていた。
    機体内部の計器類は、オプティックではまだ捉えることの出来ない遠方の轟音を補足している。
    白い機体は空を見上げ、鋭敏なセンサーでしか感知出来ない音の距離を測った。
    自身の聴覚回路で拾える距離まで、オプティックに音源の彼が写るまで。いまかいまかと待ちわびる彼は、宛ら乙女のようだと、カリーなら言うであろう。あとどれくらいだろうか…。地球には存在しない金属で構成されたスカイファイアーは空を遠望する。
    ブレインサーキットで物理的な距離を計算しては、その数字から引き算を繰り返す。細かい誤差を抜いてはまた探知した存在が近付いたことを感じ、心踊らせる。
    再度、オプティックのカメラを絞った。まだ機影は映らない。ブレインサーキットがオプティックから意識を演算機能に回した。
    顎に指を添え、数字の羅列に集中している間に、センサーで感知していたジェット機の音が鮮明になった。ジェット機のブースト音は聴覚回路で直接拾う程の距離に達した。

    来たようだ。

    遠く青い空に一つの黒点が現れる。
    黒点は影となり、影に色が付き、やがて赤と水色の施されたジェット機がオプティックに写った。
    見間違えようがない。スタースクリームだ。
    宙を蹴るように一回転するとスタースクリームはF-15戦闘機からロボットモードにトランスフォームした。
    地を震わせ、砂埃を撒き散らせ、スタースクリームは着地した。周りを砂塵がもうもうと巻き上がる。
    スカイファイアーは巻き上がる土煙りが落ち着くのを待った。
    すると、もうもうと視界を覆う砂から影が縦に揺らめいた。
    何かに強く腕を引かれた。予想外に近くにいたスタースクリームに腕を取られ、そのまま宙に浮くよう誘われた。
    「スタースクリーム?」
    怪訝な様子で問い掛けるスカイファイアーに、スタースクリームは掴んでいた腕を優しく離し、開口一番に吐き捨てた。
    「きったねぇなぁ!」

    土埃に慣れきった生活はスカイファイアーの清潔さに対する感覚を変えていた。
    テレトラン1は乾燥地帯に墜落した宇宙船だ。基地として利用しているそこは砂塵も舞えば、塵埃も発生する。サイバトロンは荒くれ者から頭脳労働者まで様々な特長を持った者たちの集まりだが誰一人、生活環境に文句は言わなかった。
    綺麗好きもいることはいるが、自身で処理をしているか、或いはニューヨークに新しく作られた基地に駐屯するか。よって、サイバトロンの中では際立って問題視されたこともなかった。
    だが、デストロンの参謀であるスタースクリームはそう思わなかったらしい。
    「サイバトロンはなんて汚ねぇところに住んでやがるんだ…。ま、あんな穴蔵に作った基地の生活で満足してる回路の持ち主ばかりじゃあ無理もないか」
    ブツブツと皮肉交じりに文句を垂れるスタースクリームは、汚い臭いと形容したスカイファイアーの装甲の隙間を念入りにチェックしている。砂埃に塗れた装甲の隙間や、ファンにこびり付いた油など。目視できる部分の汚れを備え付けの簡易リペア器具で徐機している。
    当のスカイファイアーはと言えば、そのスタースクリームよりも大きな機体を横たえ、されるがまま。空色の腕が装甲を暴くことに何の抵抗も見せなかった。
    ただ、ブツブツと零れるスタースクリームの小言に対し、ふと思ったことを口にしてみた。
    「前から思ってたんだけど…君は少し、潔癖過ぎない?」
    「はあ!?てめぇがあんな埃くさいところに慣れちまったからそう感じるんだろ!良いから黙ってセンサーオフにしてろっ」
    一を言えば十で返って来る。スタースクリームの多弁に押され、スカイファイアーは口を閉じてしまった。そして、スタースクリームはスカイファイアーを叱責した後、再び手元に意識を戻した。集中しているスタースクリームのヘッドパーツを視界の端に入れ、スカイファイアーは別に気を使わなくても…と言う言葉を飲み込み、センサーを一つ一つオフにしていった。

    「おい、…おい。センサーオフにしろとは言ったがよ」
    スカイファイアーの白濁の視界には何も映らず、聴覚回路がスタースクリームの声だけを拾う。
    「寝んな」
    「…ふぅ…、んんっ」
    感覚を落とした(人間でいう所の微睡み状態の)スカイファイアーが何とか返事紛いの声をあげる。
    細心の注意を払うが、何せ全身が精密機械。
    どこかしらのセンサーにリペア器具の切っ先が触れれば、神経回路の末端である四肢や顔など様々な箇所が反応を返す。無意識下での反射に、リペア器具をオイルパイプの傍まで近付けていたスタースクリームは叱咤した。微睡みを誤魔化そうとする声。
    「スリープモードに入ったら危ねえだろうが、おいっ起きろ」
    自衛装置が働き苦しい思いをするのはスカイファイアーだ。
    「大丈夫…君になら、どんなことをされても、…」
    スカイファイアーのうつらうつらとした思考のさり気ない一言に一気に神経を集中させていた手元から聴覚回路が拾った言葉へ意識がシフトした。
    「…お前」
    ブレインでは先程の言葉がリフレインされている。
    「ふぅ…っ」
    「スカイファイアー…」
    スタースクリームは低声で呼び掛ける。微かな身動ぎと吐息の漏れる音が返る。掴んでいたリペア器具を無造作に台の上に置き、スタースクリームはスカイファイアーの顔を覗き込む。
    ピントのあっていないオプティック奥のカメラが揺れている。堪らずキスをした。
    スカイファイアーは驚くことなくスタースクリームに応える。舌を伸ばし、お互いのそれを絡める。麻痺した感覚のスカイファイアーは満足に答えることが出来ず、薄っすらと口を開き、スタースクリームを咥内へと導く。小さな舌が入り込み、スカイファイアーの咥内を貪り始めた。蕩け始めたオプティックセンサーは目の前の真剣な眼差しと、やっと焦点を合わせた。
    「スカイファイアー…」
    満足したのか、啄ばむようなキスをしながら、スタースクリームはやっと意思を持った青いオプティックセンサーを見つめ返す。
    こくり、とだけ小さく頷かれ、代わりに両足がゴソゴソと動き、スタースクリームの細い腰が白い太腿に包まれた。


    end.
    ==============



    ② タイトル:思考回路はショート寸前

    スタ→スカファ 軽くコンマイ
    頭がお馬鹿になったスカファに振り回されるスタスク





    「君たちの関係を鑑みて緊急の通信を行っている」
    「これは決して罠などではないよ」
    サイバトロンからの緊急通信が入った時がたまたまスタースクリームの留守番、という名の外出禁止時で良かった。
    「スカイファイアーにトラブルだ」


    スタースクリームは嫌悪感からあからさまに表情を歪めていた。
    人間で言うところの『鳥肌物』というやつだろう。
    彼が通信を切り、海底基地からこっそり砂漠の難破船の所にやってきた時に出迎えたのは異様な光景だったのだ。
    そこにはサイバトロンの司令官コンボイとその忠実な副官マイスターに、さも連行される様に連れられた旧友スカイファイアーが居た。
    その姿を目にしたスタースクリームは、アイツもとうとう軍法違反の処分か?!と身構え、力づくでも奪って逃げる所まで想像を巡らせていた。
    事実、思考は行動に出ていたらしく、身構えた時点で制止の声をあげたマイスターが間に割って入ってきた。
    話を聞いてくれ、と。
    味方ですら出し抜き、裏切ることが日常茶飯事のスタースクリームがその言葉を疑わないわけがない。
    そんな彼が躊躇いがちに銃を収めたのは、説得者がサイバトロンのリーダー・コンボイだということと、離別したとはいえ旧知の友が戦闘とはかけ離れた穏やかな表情で居続けていたからだった。
    深刻そうに口火を切ったのはマイスターからで、スカイファイアーが任務中に回路を故障したのだという。
    別に故障箇所なんてないじゃねーか…と、スタースクリームが口走りかけたところで、スカイファイアーは真横にいたマイスターに甘えた様に擦り寄り、ここ一番の声で囁いた。
    「マイスター副官、こんな殺風景でつまらない所にいても、貴方はこの星のどの生命体よりも美しい…。なぜプライマスは貴方に欠点を与えなかったのでしょうね。私の視線を独占してやまないとは…いけない方だ」
    「はは、ありがとうスカイファイアー。でも今は大事な交渉中なんだ、悪いけど少し黙っていてくれるかい?」
    スタースクリームは聴覚回路を疑った。
    常時余裕ぶっているマイスターが仲間にかけるにしては辛辣な言葉を告げているのもあるが、それより何より親友が変だ。
    「司令官お願いします」
    「ああ。わかっている。スカイファイアー、私と向こうでお喋りしようか?」
    「我らが偉大なリーダー、コンボイ司令官の頼みとあらば喜んでお喋りに興じますよ。司令官とは一度ゆっくり知的な会話をしてみたかったんです、そう。ゆっくり二人きりで、ね。」
    自分の知る最も親しい友が、恋人に向けるような熱い眼差しをそこらの低脳な金属生命体に向けている。
    サイバトロン如きの、ましてや、いけすかないマイスターと知的な会話など出来る可能性がカケラもないコンボイが、親友から愛の告白紛いのクサイ台詞を呟かれている。
    スタースクリームは目眩がした。
    「俺働きすぎかもしれねぇ…」
    「君が?アハハッ、それはないんじゃないかな?」
    マイスターに爽やかに嘲笑われ、スタースクリームは舌打ちした。

    つまりサイバトロン側の見解はこうだ。スカイファイアーのなんらかの感情を司る回路がショートしてしまった所為で、サイバトロンは何故か混乱状態に陥った、という。その混乱状態からの復旧と原因究明の間、メガトロンやデストロン側に情報を漏らさず、スカイファイアーを預かって欲しいのだと。
    「スカイファイアーの有様を見て、少しは話を聞く気になったかい?お互いに利になる提案だから、君に損はないと思うけどな。そう…二、三日でいいんだ。こちらの復旧作業が完了するまでの間だけでも…」
    「俺も暇じゃねーんだよ。それに、俺たちは敵同士だぜ?お前らが混乱状態にあるなんて願ってもねぇ!!」
    赤色のオプティックレンズが強く明滅し、得意の悪い笑顔を向ける。良い情報を得たという思考は仲間を出し抜き、サイバトロン側を壊滅に陥れ、メガトロンからリーダーの座を奪うシュミレートを開始していた。
    「そうか…なら止む終えんな。やはりマイスター。君が付きっきりになって、彼に変な虫が付かないよう見張って貰うしかない…」
    「そのようですね。まぁ司令官の頼みとあらば、私は喜んで引き受けますよ」
    「待て待て待て!その二択しかねえのかよ?!!マイスター?!優男にして、サイバトロン一貞操観念の緩いと噂のそいつに警護させるって!?そりゃ、悪い虫を付けてるのと同義だぞ!?」
    「我々もこれ以上被害を拡大するわけにはいかんのでな。なぁに大丈夫!マイスターならスカイファイアーのクサイ台詞に心奪われることはないから心配はいらないさ。キザは彼の得意分野だからね!」
    おいおい、そりゃ事実だが…。
    あのコンボイにクサイ、と言われると腹立たしい。
    一瞬マイスターの笑顔も引きつった。常に熱い言葉をかけ、コンボイを誘っている彼も流れ弾に心の傷を抉られた様だ。スタースクリームにとってはいい気味だったが。
    そして、確かに人員が足りていないとのサイバトロン側の主張は事実なのだろう。今現在誰1人、総司令官の護衛を寄こしてこず。コンボイの最終手段が実行直前なのも、またその現状から伺い知れた。
    「絶望的じゃねえか…」
    ただでさえスカイファイアーは頭がイかれて性のタガが変な方向に外れているんだ。マイスターなんかにその身を預けたら、一晩でキズモノにされてしまう。それが、仮に同意だとしても彼は原因不明の病気なのだから、冷静な判断能力があるとは思えない。
    スタースクリームは一人頭を抱えた。
    と、同時に元凶のくせして自身の貞操の危機まで招いているスカイファイアーがヘラヘラといつもと変わらず和かに突っ立っているだけの事に段々腹が立って来た。
    アホヅラ晒して…コイツことの重大さ、わかってんのか?
    「このままじゃお前危ないんだぞ?わかってんのか?早く原因を見付けないと…」
    いつもの調子で問いかける。
    「嫌だな、決まっているだろ?君の魅力の所為で私のスパークは乱れっぱなしなんだよ。それが原因さ」
    飄々と澄まし顔で口の中に砂利でも突っ込んだような違和感ばかりの言葉を返すスカイファイアーに、スタースクリームの拳が震えだす。
    「そう…君はいつ見ても素敵だ。私だけの麗しの小鳥ちゃん。磨き上げられたボディの輝きに、美しくも荘厳なジェット音は私の聴覚回路を刺激して止まないんだ。アイセンサーには映らないけれど、洗練されて冴え渡る頭脳も魅力の一つだ。ああ、たまらないよ…」
    ペラペラと喋りながらスタースクリームの手を取り、腰をガッチリホールドし、海よりも濃いオプティックレンズで見つめられる。欝陶しいと振り払うが、馬鹿力だけはリーダークラスなだけあってスタースクリームの力だけではビクともしなかった。
    いつの間にか密着し、イチャつく二体をまじまじと見つめていたマイスターがポツリと呟いた。
    「君たちは、二人っきりの時もそんな感じなのかい?」
    「そんなわけあるか!!!と言うか、殴っていいか?!」
    苛立ちのあまり、スタースクリームの固く握り締められた拳はギリギリと音を立て、小刻みに震えていた。
    今にも眼前に迫った青いオプティックを叩き割る勢いだ。
    「いや、止めたまえ。これ以上衝撃で悪化したら手が付けられなくなる」
    「司令官、寧ろ手を出されてしまう、の間違いじゃないですか?」
    マイスターのドヤ顔が光る。
    「何うまいこと言ったみたいな顔してんだよ!!てめぇもハッとするなコンボイ!!!」
    天然の気がある、と話しには聞き及んでいたが、今この状況で認識したくなかった。スタースクリームは火を噴くような突っ込みの勢いが止まらない。
    強くもない神経回路がジリジリと焼き切れる思いだ。
    「そんなことより!治療について何かしら対策とってるんだろうな?テメェらの中でも、ちっとはマシなおつむを持った奴らはいるんだろ?」
    「ああ、それなんだが…。彼らも今頭を抱えているんだ。己の内なる煩悩に対して」
    フゥッと悩ましげな溜め息を零したマイスターが、無駄に小首を傾げ告げる。
    「もう、本当に…かれにゾッコン?」
    「何処まで垂らし混んでるんだよ!?」
    あのマッドサイエンティスト共がか?!!
    その本人も知らなかった才能が、味方にまで猛威を奮っている事に初めて同情した。
    「ほら…うちの科学者連中ピュアだからさ」
    それが可愛いんだけどね?とマイスターにニヒルな笑みを見せつけられ、スタースクリームの表情は苦々し気に歪む。何故か横目で見ていたコンボイがそれに反応し、妬けるな…と呟いた。マイスターはコンボイの独り言を聞き逃さず、私の可愛いヒトは貴方だけですよ。などと熱い言葉を投げかけ始める。
    見つめ合い、手と手が触れ合う…。
    サイバトロンのツートップは突然、本題そっちのけで自分たちの世界に入って行った。
    スカイファイアーは腕に収めた親友に更に寒い言葉をかけ続けている。
    独り取り残されたスタースクリームの心が荒む音がした。





    「で、だからってココまで連れて来ちまったのかよ!?」
    スカイワープがヒステリックに吠える。
    「仕方ねーだろ。他に行く所ねえんだから…」
    「メガトロン様が知ったら、黙っちゃいねーぜ!!」
    スカイワープの一言にも一理ある。
    メガトロンや参謀格の奴らが不在の今だからこそ、この大型機であるスカイファイアーを海底の基地に侵入させることが出来たのだ。
    それも正面から。
    頭の壊れた捕虜としてスタースクリームが連行する体で、基地の開場を迫った。
    警備のために残ってた数名はスタースクリームのごり押し論で騙すことが出来た。
    ふん、本当間抜けな奴らだぜ。
    だが、長年連れ添った同型機にはスタースクリームが必死に何かを隠そうとしている、と言うことや、捕虜の筈のスカイファイアーを自室に連れ込んでいる現場などが、光よりも早くにバレてしまった。

    「そうじゃなくても、コイツ正気に戻ったら恥ずかしさで憤死しかねないな」
    サンダークラッカーも冷静に告げる。
    スタースクリームはここでも頭を抱えてしまった。
    「そう言えば…」
    キャンキャン吠えていたスカイワープの方に白い巨体がのそりと近寄った。
    「アストロトレイが誰かを探してたなぁ?」
    「は、え?なに…?!」
    「なんでも、可愛いらしい恋人に今すぐ会いたいとかなんとか…ここに来る途中で探してたけど、誰のことだか」
    とぼけた顔してスカイワープの動揺に拍車をかける。
    「こいっ、ばっ!ちげぇよ!てやんでぃあの馬鹿野郎!!変なこと言いふらしてんじゃねぇっていつも…あのヤロウっっっ!!!」
    バチッと火花が爆ぜるような音を出し、スカイワープは消えた。
    流石に以前の付き合いも長かっただけありってか、あいつの扱い心得てるな。とサンダークラッカーは感心した。
    和やかな表情を変えず、クルリと振り返る。
    「ふふ、行っちゃたね」
    「…お前なぁ」
    スタースクリームが呆れの声を出すが、先ほどまで突っ掛かっていた奴が消えて清々したのだろう。
    言葉少なに、ため息を吐くだけだった。
    「アンタにも好き嫌いがあるんだな」
    「嫌いとかではないよ。ただ、今はどこか遠くで彼を必要としてる声が聞こえたような気がしただけさ」
    「電波ちゃんかよ」
    サンダークラッカーの冷静なツッコミにも、嫌な顔一つせずニコニコと振る舞う。
    「ところで…」
    ふとスイッチが入った顔をサンダークラッカーに向け、異様なまでのオーラを出し始めた。まずい。
    「二人っきりだね…」
    両手をガシッと包み込み、表情を覗くように首を傾げる。
    「おい、俺もいるぞ!」と、スタースクリームが当然の突っ込みを入れるが、脳みそ下半身と化したスカイファイアーにはスタースクリームの声など全く聞こえていない。
    途切れる事なく目の前の赤いオプティックに熱い視線を送り続けている。
    サンダークラッカーは後からスタースクリームがネチネチうるさくなるな、と頭の片隅で思うがその反面、先ほどから甘いポエムばかり作り出す古い知人が自分にどんな評価をするのか?
    少し気になってもいた。
    「サンダークラッカー」
    語気に力を込め、甘い声でスカイファイアーが名前を呼ぶ。
    それが始まりの合図だ。
    白い大きな優しい手がそっとサンダークラッカーの手を取り、強く握り込む。
    「君の素直な性格がいつか命取りにならないか、それが私は常々心配だったんだ。けれど、その凜とした表情からはそんな弱々しさ微塵も感じられない。
    それって素晴らしいことだよね?
    ああ、でも困ったことがあったら私に言ってね。全力で駆け付けるから。でも本音を言うと、今からでも君をこの息苦しい場所から連れ去り、誰の目にも触れさせず暗い宇宙の彼方で二人きっきりでひっそりと暮らしたいよ…」
    重てえっ。スカイファイアーの心の闇を垣間見た気がして、スタースクリームはここ一番の引きつり顔を見せた。
    「あ、…お、おう。でも、俺にはサウ…いや、心に決めた奴が」
    珍しく歯切れの悪いサンダークラッカーにスタースクリームは目を見張った。
    スカイファイアーも脈ありと判断したのだろう。
    俯き気味に視線を逸らしたサンダークラッカーの、その先を追い掛ける様に強気に出てきた。
    「私じゃダメかい?」
    「いや、え…困る」
    「おい!おい!!サンダークラッカー!お前、あの陰険野郎と同じ電波に当たり過ぎたか?その手を振り払えよっ」
    「スタースクリーム…オレ、どうしよう?」
    「だからっ!!!手を振り払えって!!」
    予想外だった。只でさえ、あまり自己主張しない質のサンダークラッカーが、知らない間にねちっこい神経質野郎の吐きそうな、重たい言葉に気持ちが傾きかけるなんて。
    それにしても、いつまで手を握ってるんだあのバカファイアーは!
    スタースクリームは頭が沸騰し、今にも煙りを出しそうだ。
    「良いから手を離せ!お前にはあいつがいるだろ!あの野郎に抱いて貰えてねぇのか!?」
    「いや、抱いてはいるけど…」
    「うげっ」
    聞きたくなかった!
    スタースクリームは知りたくもない同胞の性事情を聞き、一瞬にして嫌な想像が脳裏を駆け巡った。
    ビジュアルにするとエグいな…。グツグツと煮立った釜の様な気持ちも萎えかける。
    「あんまり彼は言葉を尽くしてくれるタイプじゃないんだね。可哀想に…」
    握った手をスリスリ…と、スカイファイアーは猫撫で声を出す。
    「何ならなこの場から攫って私の研究室でずっと暮らせばいいのに。君だけを見ていたいんだ、私の可哀想な小鳥ちゃん」
    小鳥ちゃんって、もしかして航空系統全員に言ってるのか!?
    じゃなくて、顔っ!近い近い近い!
    頬を染め、生娘の様に恥じらいながら、碌な抵抗も見せない水色の同型機を目にして下がりかけた熱がカッと一気に沸騰した。

    「一度陰険野郎に抱かれて来いッッッ!!!」



    end.
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