バグふ、と目が覚めて自身の違和感に気が付く、個として存在しているが、体の端が空気と溶け合い、混ざり合い境界が曖昧な…とても不思議な感じだ
は?
目を開き、一面に広がる闇に頭が混乱する
目が開いてないのかと顔に手を当て、確認しようとし持ち上げ普段の手が見えるかと思えば、見覚えのある黒く爪先が鋭く尖ったガントレットが視界に現れ、この手は一体なんだ…と固まってしまう
…イグリット?
後ろに控えているのかと思い後ろを確認すれば、旬が動くと同時に重苦しい金属音が響くが、イグリットは居なかった
……
再度手を掲げ、握って開く
先程現れたイグリットの手が同じ様に動き少しずつ状況が理解してきて、旬は内心冷汗が止まらなくなる
システムで振分けた知能は、混乱する旬を置き去りしながらこの状況を冷静に判断し結果を弾き出した、ここは影の中であり、何故か自分はイグリットに成り代わっていると
え…ど、どうすれば、いや、まて、おれの体は?イグリットは、どこに行った…?
ぐるぐると思考が駆け巡るが、結論がだせず、頭を抱えていると、グンッと全身が何かに引っ張られる感覚に襲われ、未知の感覚に戸惑う
抵抗虚しく謎の力に引き摺られ次に目を開けたら、顔を青褪め自室の床にへたり込み見上げてくる俺が居た
「しゅ、しゅくん…」
いつか会話を…どんな声で話しをするのか…と色々想像していたが、こんなにも弱々しく情けない声を聞くとは旬は思いもしなかった