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    妄言集

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    妄言集

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    ※SE
    ※微女装あり注意

    #SE旬

    黒歴史「なぁ、兄さん」
    「ぜっっったいに嫌だ」
    「…まだ何も言ってないんだが」

    帰宅してからずっとソワソワと落ち着きの無かった旬がとうとう話しかけて来た。
    なるべく話しかけられないようにと、忙しい風(実際昼飯とついでに夕飯の準備で忙しかったが…)を装っていたがどうやら限界だったらしい


    「お前が兄さんって呼ぶ時は大体碌なこと無いからな?自覚あるよね?」
    「そんな事は…あるな?」
    「たちが悪すぎる…」

    やっぱり自覚あったよコイツ…ズキズキと頭部が痛くなり、つい額に手を当ててしまう。
    タケノコの様にニョキニョキと急成長してから図太くなった弟にシュンは振り回される回数が増えた

    「で、だ、兄さん」

    ガザガサと音をたてながら、テーブルに大きめの紙袋と長方形の箱を置いて真剣な顔で見つめてきた。

    「これを着て欲しいんだ」
    「…今から昼食だって見たら分かるよね?邪魔だからはやく退けろ」
    「……はい」

    幾ら振りまわされても、兄は強かった

    「んで?何を着ろって?」

    少し遅い昼食の後、まったりと茶をしばきながら先程中断した話しをほじくり返す

    「ん?あぁ…」

    最後の皿を洗い終わったのか、手を拭きながら戻ってきた旬は、何もない空間に手を翳すとパリパリと音を響かせながら先程の袋と箱を取り出した

    「毎回思うけど、それ便利だよね」
    「試しに兄さん入ってみるか?」
    「ちょっとガチ目なトーンで言われても反応に困る…てか、これ何」

    テーブルに置かれた紙袋を手繰り寄せ、中身を確認して後悔した。せっかくのまったりタイムが台無しになってしまった。

    「兄さんのために特注したんだ…絶対に似合うから、な?着てくれるよな?」
    「…、ばかじゃないの…」
    「だって、最近兄さん着てくれないし…」
    「その話しはやめろ…いや、それよりもなんで…特注…」

    ドヤ顔でちょっと自慢げな旬に怒ればいいのか、嘆けばいいのか…なんとも言い表せない気持ちに襲われる

    「…まぁ、着る着ない云々は置いといて、お前の分は?」
    「うん?なんで?」

    さも自分は関係ありませんが?な体を貫く旬の顔めがけ紙袋をぶん投げた
    残念ながらE級の腕力では顔にぶち当たること無くキャッチされてしまう。クソが。

    「え…だめか?絶対に似合うと思うんだけど…」
    「……どうしても着て欲しいんだ?」
    「!着て「着ない」そ…」
    ところで、これどこでー…

    目には目を、歯には歯を…最近の無茶振りの数々に灸を据えなければ…シュンは報復を心に決めた

    「…お、」

    旬の着てくれコールをかわし続けて早4日
    そろそろ実力行使で来るのでは…と若干恐怖していたが宅配の連絡が来たため一安心する。
    何せ週末に女子旅行してきたら?と母さんと葵に温泉のチケットを渡していて明日から旬と2人しか居ない状況を作られていたから、大分焦ってはいた。

    自分もダメージを食らうが、あのタケノコ(弟)を少しでもへし折れるならやってやろうではないか…




    「じゃぁ行ってきまーす!お土産期待しないでね!!」
    「いや、断言するなよ…行ってらっしゃい」

    母と葵を見送る、隣の視線が突き刺さるが無視を貫く。
    かちゃん、軽い音をたてて鍵が閉まって数秒後、シュンは部屋までの短い距離を爆走した

    部屋に急いで入り鍵を掛けようとするが、白い手が勢いよく割り込みドアを押さえ邪魔をする

    「あぁぁぁ…手ぇ離せ!」
    「逃げんな!今日こそ着てもらうぞ!」
    「なんでそんなこだわるんだよ!?この馬鹿!」

    無理矢理押し入られ籠城が失敗してしまう。幾ら灸を据えねばと決心しても、逃げれるのなら逃げたかった。

    「昔は普通にやってただろ…なんで拒むんだ?
    「…黒歴史をほじくり返すなよ…それにお前だって一緒にやってただろ…」

    旬の言葉に詰まってしまう
    今は旬のおかげで一定の収入が約束されているが、少し前までは本当に金欠で大変困っていた。

    何か少しでも稼げる物は無いか…二人して頭を捻らせていた時、どちらが言い出したか忘れたが、女装姿をSNS上にのせ、少ないが稼ぎをしていた
    100円や300円程で一通り揃うので試しにと格安で仕入れた長い靴下を履いただけの脚の写真をあげたのだが、思いの外食付きが良く、2人で顔を見合わせたのは覚えている。

    1人でこれなら、2人でやればもっと稼げるのでは…?

    困窮しすぎて2人して感覚が可笑しかったのだろう、そこからは顔は絶対に出さなかったが、ちょっと際どいモノや、匂わせ的なのをのせ始め…まぁまぁ、稼いだ
    承認欲求もあったが、ストレス発散やにもなっていたのだろう2人してこの女装を楽しんだ


    まぁ、葵に女装がバレかけてパタリと辞めたのだが


    「今は稼ぐ必要ないんだから、やる必要無いだろ…しかもお前、あの服は無い…本当に無い」
    「出来ればそれ着て葵と並んで写真撮らせて欲しい」
    「…とうとう脳みそイカれた?」
    「至って正常だな」
    「尚悪いわ」


    押しつけられた袋をとうとう受け取ってしまう。中には見慣れた制服がはいっていた


    「自分で着るか、それとも手伝ってほしい?」
    「…着ないって選択は?」
    「実は下着も用意してあるんだけど」
    「……」

    あまりの返しに絶句してしまう。さすがに下着まで用意されてるなんて想定はしていなかった。

    「わかった…着る」
    「!!」

    目を見開き爛々と輝かせる旬を余所に、クローゼットからつい先日届いた袋を取り出し押し付ける

    「…ナニコレ」
    「お前もこれを着るなら…着てやるよ」

    返事を聞く前に旬を部屋から押し出す。どうせアイツは嬉々として着替えてくると分かっていたから、色々と諦めながら上着を脱いだ




    遠慮がちにノックされ、返事をする前に侵入してきた旬の予想を飛び越えた姿に我慢が出来ず吹き出す

    「ちょ…ごつい…wごついよぉww…ぉぉ…ww」
    「……」
    「あっ、ははははっwww」

    一応サイズも調べて用意したのだが、鍛えているせいか上着の丈が少し足りず上着とスカートの間からチラチラとキレイに割れた腹筋と眉間にシワを寄せ不服だとアピールする姿に更に笑いが止まらなくなる

    「はぁー…wふっ、ふへへっ…なん、なんだっけ、す?スケバン?」
    「…竹刀もってアタイだよってやってやろうか?」
    「そのネタ今わかる人いるのかな…」

    上下紺色のセーラー服を身にまとった旬は中々に似合っており、自分で用意したのに少し悔しかった

    「やっぱり身長高いからロングスカート似合うね…」
    「ミニスカとかじゃなくて心底ホッとした」
    「…そっち用意すればよかったか」

    笑い過ぎてにじんだ涙を拭う、少しは鬱憤が晴れたので大満足である

    「…兄さんも着てくれたんだな」
    「……うっさい」

    言われて自分の格好を思い出した瞬間、足元の涼しさを思い出し恥ずかしくなり目を逸らす

    「葵とその姿で並んでも謙遜ないと思うぞ」
    「やめてくれ…」

    何処から入手してきたのか謎だが旬に押しつけられた袋の中には葵が通っている高校の制服が入っていた。オマケにローファーまで準備されており、旬の並んで写真が何処まで冗談なのか分からず、少し恐怖する。
    まだ人権破棄はしたくない。

    「な、兄さん…」
    「ちょっ…!?触るな!」

    スカートとニーハイから覗く素肌をするりと撫であげられ、ビクリと驚きで跳ねる

    「前みたいに2人で写真撮らないか?」
    「…アカウント消したし、撮る意味無いだろ」

    少し乗り気の旬にたじろぐ

    別に、SNSに載せなくても良いだろ…せっかく兄さんも用意してくれたんだし…な?

    「ちょっ…ちょ、まて、まてまてっ」

    あれよあれよとベットに追いやられ、押し倒される

    「ひぃっ!?」
    「…、あれ、下着は…?」
    「だ、誰が履くか馬鹿!」

    スカートから侵入してきた手に驚く、おいまて、こんなギリギリを攻めていた記憶は無いぞ!?
    焦っているシュンを余所に、旬は素早く見回し一度離れたかと思えば、袋を片手に直ぐに戻ってきた。

    「しゅ、旬?…」
    「俺は兄さんが用意した服をちゃんと着たぞ」
    「え…あ、そう、だな?」
    「なら兄さんも全部着ないと不公平じゃないか?」

    冷汗がダラダラと流れる。

    「旬…?旬さん…?嘘だよね?」
    「……」


    無言でパンツ引っ張るな!!


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