夜明けを知らせる暁光背中が熱い。荒く零れる息遣いはこの暗闇の世界じゃ命取りに繋がる。すぅ、と息を吸って吐く。整わない呼吸に次第に苛立ちが募るも後ろから追ってくる気配は先程から距離は縮まらないが遠退きもしない。興奮状態に陥っている身体はいつ正気に戻るか分からないからこそ、早く、はやく逃げなければ。
「ッ、」
風を切る音が東から聞こえる。身体を斜めに沿っても頬にかすった苦無は大木に突き刺さった。手持ちの武器は先程から続く攻防で多くは無い。耳奥で響く心臓の音が轟々と燃える炎に似ている。土井は見慣れた暗闇の中、目を閉じてその一瞬の後南東の方角に忍び寄る敵の存在を嗅ぎつけ指に馴染んだソレを寸分の狂いなく放てば後は男の呻き声と共に大木から落ちる音。
1425