自分が世界最強の魔法使いの子供であることは言ってはならない。誰に言われたわけでもないが、何となく少年はそう思っていた。
少年にとって父はただの不器用な男だ。世界最強の魔法使いなのだと言われてもいまいちピンとこない。いつも暖炉の前のソファに腰掛けて、本を読んでいたり何かを考え込んでいたり、時々母と話をしていたりする。確かにすごい魔法を使っている時の父はかっこいいが、それ以外は本当にピンとこない。
けれども、ミスラをはじめとした多くの強い魔法使いが父を石にしようと城を訪れる。そんな彼らを易々と返り討ちにする父を見て、やっぱりこの人はすごい人なんだと幼心に思った。
そんな彼の息子だと言ったらどうなるだろうか。あのオズの息子というレッテル張りは避けられないだろう。人間には恐れられるかもしれない。下手したら変な魔法使いに命を狙われるかも。だから、少年は中央の国に進学する時に決めた。
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