藪に蛇俺は祖父が怖かった。
定年まで立派に銀行を務め上げ、いつも真面目で優しい祖父は、妻である祖母にも、娘である母にも、親族にも周りの人間にもとても好かれていた。まさにお手本のような「立派な人間」だろう。
俺もお年玉や小遣いをたくさんもらったし、遊園地などに連れて行ってもらった記憶はたくさんある。確かに「いいおじいちゃん」だったと思う。
だが、俺には祖父がどこか事務的に人間をこなしているように見えた。やっていることになんというか、感情が読み取れなかった。やるべきだからやっている、そんな気がした。こんなことを思ってるのは俺だけだろう。
実際に母にすこし漏らした時には大目玉を食らった。母は尊敬を通り越してもはや崇拝のように祖父を尊敬していたようで、親を泣かせるというできれば人生のうちで発生すべきでないイベントを達成してしまった。俺は結構優等生だったこともあり、母はひどくショックだったようだ。
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