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    @tumugi_mB

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    飯受けワンドロお題「雪解け水」「笑顔」
    P飯…カプというか、コンビ?

    見たかったもの 悟飯を荒野に放り込んだ声が大きくて背の高いひとは、いつ食事をしているのか分からない。四六時中一緒にいて、へとへとになるまで闘う練習をしているのに、朝ごはんもお昼ごはんも夜ごはんも食べている様子がないのだ。
     もしかして悟飯が疲れて眠ったり気絶している間に食べているのだろうかと思って、頑張って夜更かししてみたこともある。あっという間にバレて、早く寝ろと怒られた。
     不思議だなあ。もしかして、すごく少食なのかな。
     悟飯も父も母よりずっとたくさん食べる方だ。特に荒野に来てからは毎日激しく動いてばかりだから、ものすごくお腹が減る。
     ピッコロは、お腹が減らないのだろうか。

    「ピッコロさん、好きなものはなんですか?」
    「は?そんなもの聞いてどうする。さっさと寝ろ」
    「はあい」

    「ピッコロさんって中華まん食べたことあります?」
    「ない。早く寝ろ」
    「はあい」

    「ピッコロさん、お裾分けです。恐竜の尻尾のお肉ですよ」
    「いらん。お前ひとりで食え。明日も厳しい修行だぞ」
    「はあい」

    「ピッコロさん、好きなものはなんですか?」
    「……水だな。特に北エリアの雪解け水は悪くない」
    「お水!」
    「なんだ、答えてやっただろう。早く寝ろ」
    「はあい」

     ピッコロは水が好きらしい。まあ確かに、水を飲んでいるところは度々見かけた。悟飯がその辺でとってきた木の実や、ちょっといただいたお肉をどんどん腹に詰め込んでいたときも、ピッコロは静かに水を飲んでいた。
     お水かあ。北エリアって、遠いなあ。
     悟飯がいつかピッコロのように空を飛べるようになったら、悟飯の大好きな中華まんと一緒にプレゼントしてもいいかもしれない。
     ピッコロはいつも顰めっ面だ。モタモタしているとサイヤ人という怖い宇宙人が地球を襲いにやってくるから仕方ない。
     仕方ないけど、ちょっとくらい笑ってくれたらいいのになあと思う。


     ナメック星人は食事がいらない。水だけで生命の維持に事足りる。
     だがナメック星人は植物でも微生物でもなく、直立二足歩行の知的生命体だ。
     悟飯たちのように食事からエネルギーを得ている多くの生き物からしたら、燃費が良すぎて神秘的にすら感じる。いや、実際に地球の神様はナメック星人だったわけだから、かの人々に神秘を感じるのは地球人として当たり前の感覚なのかもしれない。
     悟飯はいつか大好きな中華まんを師匠と一緒に食べたいなあと思っていたが、どうやら叶わぬ夢らしかった。
     でもまあ、ピッコロにと考えていたプレゼントはもうひとつあるのだ。中華まんの件は残念だが、しつこくピッコロに話しかけたお陰で悟飯は師匠の好きなものを知っている。
     ピッコロは今、孫家にほとんど泊まり込みで悟飯や父と修行をしている。人造人間の襲来に備えるための修行だが、悟飯にとっては大好きな父と師匠と一緒にいられるから、結構楽しんでいた。
     でも、やっぱり師匠は顰めっ面なのだ。モタモタしているとタイムリミットがきて人造人間に襲われてしまうのだから仕方ない。
     仕方ないけど、やっぱり笑ってみせて欲しいのだ。
     今の際に見せた儚い笑みではない。嬉しいとか、楽しいとかそんな感情から溢れる笑みがみたいのだ。


     悟飯は以前と違って空が飛べる。地球の裏側までだってひとっ飛びだ。つまり、ピッコロが好きだと言った北エリアの雪解け水だってとりにいくことができるのだ。
     北エリアは極寒の地だ。いつも雪が積もっていて、住んでいるひとたちも非常にモコモコ着込んでいる。
     この道着で北エリアまで行ったら、風邪ひいちゃうかな。
     それは非常にまずい。家族を心配させてしまうし、師匠は笑うどころか眉間に深くシワを刻んで怒るだろう。
     悟飯はモゾモゾ箪笥を漁ってみたが、あんまりモコモコな服は持っていなかった。どうしようかなあと箪笥とにらめっこしていたら、ひょこっと父が顔を覗かせて、服に顔を突っ込む息子になにやってんだ?と声をかけた。
    「あ、おとうさん。ええと、ボク、暖かい服あんまり持ってないなあって」
    「あったけー服?寒いんか?」
    「ううん、ええと、寒いところに行きたくて」
    「なんだってまた」
    「……ピッコロさん、北エリアの雪解け水が好きらしいんです。おとうさん、ピッコロさんが笑ったとこ見たことあります?」
    「ははあ、なるほどなあ。ウーン、こう、クククって悪い感じに笑ってるところなら……あったような?」
    「ですよね。だから、好きなものプレゼントしたら笑ってくれるかなあって」
    「んー、ちっと待ってな」
     待ってなと言いつつ、悟飯をひょいと抱えて悟空は自分の部屋に向かった。悟飯は疑問符を浮かべながらもされるがまま運ばれた。
    「えーと、確かここら辺に……奥の方いっちまったかなあ?」
     悟飯を小脇に抱えたまま、悟空がクローゼットを片手でガサガサ漁る。悟飯を降ろせばやりやすいんじゃないかなあと思ったが、悟飯は黙っていた。
    「お、あったあった。ほれ悟飯、着てみろ」
     すとんとようやく床に降ろされて、少し大きなモコモコのコートを被せられた。ついでにモコモコの帽子を頭にポンと乗せられ、耳まで隠れた。
    「わあ!すごいモコモコ!おとうさんこんな服持ってたの!?」
    「むかーし寒いとこにいった時にな、そこに住んでるひとに貰ったんだ。あったけーだろ」
    「うん、むしろ暑いくらい」
     家じゃ仕方ないと悟空はアハハと笑って、ほら行って来い!と悟飯の背中をぽんと押した。
    「はい!ありがとうおとうさん!行ってきます!」
    「あ、待った待った、手袋もあったんだった。ええと、どこだったかなー、ちっと待ってなー」
    「はあい」


     悟空のお下がりで全身モコモコになった悟飯は、北エリアまでぴゅーんと飛んできた。比較的温暖なパオズ山も暦上はもう初春というやつで、冬に比べると暖かい日もあれば寒い日もある。
     しかし北エリアは永久凍土なんじゃないかというくらい、年がら年中凍った土地だ。悟空から貰った服があっても、露出している顔はひんやり冷たい。あんまり長居をしていると鼻が真っ赤になるだろう。いや、もうなっているかもしれない。
     雪解け水なら、上流の方かな。
     さーっと行って、さーっと帰って水をピッコロに渡すとしよう。悟飯からこんなプレゼントを貰ったピッコロは、一体どんな顔をするのだろう。

    ※※※※※※※※※

     悟飯の気配が一人でびゅーんと遠くに行くのをピッコロは感じていた。これから修行だというのに、あいつはどこへ行くつもりなのか。しかも一人で。
     悟空が一緒なら、ピッコロだってまあ時間に間に合いさえすればいいと放っておいただろう。だが悟飯は一人で遠くに行っているのだ。
     ちょっと様子をみてこようか。
     悟飯は幼いこどもで、この地球でもかなり上位に入る実力者だが、荒野でピーピー泣いていたチビの姿がいつまでも忘れられない。
    「よっ!ピッコロ。どこいくんだ?」
    「孫……悟飯のもとだ。というかお前がいながら、なぜあいつは一人であんな遠くに行っている」
    「ピッコロ、おめえちっと過保護すぎるな。悟飯なら大丈夫大丈夫。そのうち帰ってくっから、大人しく待ってろよ」
    「…………」
     過保護、なのだろうか。確かに悟飯はもう立派な戦士だが、ピッコロから見ればまだまだ小さいガキだ。悟空から見たって悟飯は小さいはずなのに、なぜ父親のこいつはこんなにも悠長にしているのだろう。
     信頼というやつなのか。
     心配しすぎなんて言われて、ちょっとピッコロがモヤモヤしている間に悟飯の気配はパオズ山に近付いてきた。帰ってきているのだ。こちらに向かうスピードもいつも通りで、気にも不審な点はない。何事もなかったのだろう。
     無意識にほっと息をつくと、悟空がニヤニヤこちらを見ていることに気付いて、慌てて顔を取り繕った。


    「はい!ピッコロさん、あげます」
    「ん?……これは、水か?」
    「はい。北エリアの雪解け水です。ピッコロさん、前に言ってましたよね。好きだって」
    「よく覚えていたな。これを取りに行っていたのか?」
    「はい。ボク舞空術にもすっかり慣れましたから。これをずーっとピッコロさんにプレゼントしたいなって思ってたんですよ。ピッコロさん、生き返れて本当に良かった」
     水筒を差し出して微笑む悟飯は、あまり見ないモコモコした服を着ている。帰ってきたばかりの頃は帽子もしていたが、パオズ山では暑いからと父に手渡していた。どうやらこの分厚い服は元々悟空のものらしい。
     悟飯がわざわざ北エリアまで行って、ピッコロのために水をとってきた。
     キラキラした目で見上げてくる悟飯の頭をワシャワシャ撫でてやると、悟飯は目を丸くしてなぜか驚いたような顔をした。
    「なんだ、どうした」
    「ううん!なんでもないです!ただ、ずっと見たかったものが見れて嬉しいなって」
    「なんだそれは」
     師匠をからかうなと乱暴にグリグリ髪をかき混ぜると、悟飯はキャアキャア笑った。
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