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    @tumugi_mB

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    飯受けワンドロお題より「独占欲」
    🐯🍚のつもりで書きましたが、カプ要素薄いし未来師弟ですねコレ

    唯一の弟子 トランクスの師匠は強いだけじゃなくて、とても頭の良いひとだ。トランクスの知る限りで母ブルマの小難しい話についていけるのは彼くらいだったし、修行の合間に難しい本を読んでいるのを何度も見た。
     優しくて聡明で、平時は少しぽやんとしているところもある柔和なひと。そんなひとが子供たちに好かれるのは当然で、少年少女に請われた彼が学校の先生みたいに子供たちに勉強を教えてやるのだって、なんら不思議なことはない。
     悟飯は昔からトランクスにだって勉強を教えてくれているんだから、彼からすれば生徒が増えただけだろう。


    「こんにちは。悟飯せんせいはいますか?」
     昼過ぎにカプセルコーポレーションのドアをノックしたのは、トランクスより少し歳下の男の子だった。悟飯がときどき勉強をみてやっているうちの一人で、分からないところがあるからまた教えて欲しいと頼みにきたのだ。
     悟飯は優しいから、こういうことを断らない。
     トランクスはそれを悟って、あーあ、と思ってしまった。
     昼食のあとはトランクスの勉強を見てもらって、それが終わったら修行をして、ついでに夕飯に誘って…と朝から計画を練っていたのに。
     少し前までは悟飯に教えを受けていたのはトランクスだけだった。街の復興を手伝っているうちに、いつの間にか青空教室が開かれるようになり、彼の生徒は少しずつ増えている。
     こんな状況下で、絶望せず勉強したいと思う子がいるのはとても良いことだ。良いことなのに、トランクスが悟飯と過ごす時間が減っていくからちょっとモヤモヤする。
     ボクの師匠なのになあ。
     トランクスはもう十四歳だから、そんな子供っぽいことを言うつもりはないけど。
     少年に服を引っ張られた悟飯はトランクスを振り返って、ごめんちょっと行ってくるよ!っと片手を上げた。
     手を振り返して師匠を見送りながら、あーあ、ともう一度ため息をついた。


     トランクスは悟飯のあとをこっそりつけて、青空教室が終わる頃を見計らって悟飯に修行をつけてもらうことにした。
     今日のトランクスの敗因は、さっさと悟飯を誘わなかったことだ。先約があれば、彼はそれを優先してくれただろう。
    「せんせい、これは何て読むの?」
    「せんせい見て、できたよ!マルつけして!」
    「九九が覚えられない……」
    「なんで空って青いの?」
    「本持ってきたの!読んで読んで!」
     ……また見知らぬ子が増えているような。
     むむ、とトランクスは建物の影から様子を窺った。忙しない子供たちの質問に逐一答えてやり、困っている子に説明をしてやり、うまくできたら頭を撫でてやっている師匠を見てモヤモヤが募る。
     しかしまあ、悟飯の弟子はトランクスだけなのだ。あの子達はときどき勉強をみてあげているだけであって、弟子ではない。闘い方を教わっているのもトランクスだけ。赤ん坊の頃からお世話をしてもらったのもトランクスだけだ。
     つまりトランクスは悟飯の特別だ。
     そう思えば、悟飯がときどきトランクスじゃない子達に構っていることだって……
    「ね、悟飯せんせいって武術できるってホント?」
    「ああ、本当だよ。小さい頃から習ってたんだ」
    「じゃあせんせい、おれにも武術教えてよ!人造人間をやっつけるんだ!」
    「えっ!ずるい!せんせい、わたしにも教えて!」
    「それは……」
    「ダメだ!……あ」
     思わず乱入してしまった。悟飯にもバレないよう気を隠して、こっそり見守っていたのに。
    「えー!なんでだよトランクス!おれ強くなりたい!」
    「だ、ダメなものはダメだ!危ないし、その、人造人間は本当に怖いやつらなんだぞ!」
    「だから強くなりたいんでしょ!ね、せんせいお願い。わたしも弟子にしてよ」
     トランクスより少し歳下の子供たちに囲まれて困った顔をする悟飯の腕をぐいっと引っ張る。
    「人造人間と闘うなんて、悟飯さんくらい強くなくちゃ生き残れないんだぞ!ねっ!悟飯さん!」
    「えっ?ああ、そうだな……トランクスの言う通り、人造人間は本当に強くて怖いやつらだ。オレだってまだまだあいつらには及ばない。もっと修行しなくちゃいけないんだ」
    「そんなあ、せんせいでも?」
    「わたしたちが子供だから駄目なの?トランクスだって子供じゃない」
    「ボクはもう十四歳だ!」
     悟飯の腕を抱えながら憤慨するトランクスの頭を、悟飯が宥めるようにぽんぽん叩く。
     あれ、もしかして今ものすごく子供っぽい振る舞いをしているんじゃないだろうか。
    「あはは、トランクスはすごく強いんだぞ。そのうちオレより強くなるかもしれない。だから闘いはオレたちに任せて、みんなは街の復興を頑張ってほしい。この街をこれから支えていくのは君たちだ。闘うよりずっと難しいことかもしれないぞ」
    「そうかなあ……」
    「えー、じゃあ弟子は諦めるわ。わたし、悟飯せんせいのお嫁さんになる」
    「ダメだ!」
    「なんでトランクスが返事するのよ!」
    「ホラホラ、今日の勉強はここまで。ジェーン、結婚相手はもっと大きくなってから決めたらいいよ。じゃあみんな、また機会があればね」


     トランクスはなんとなく手を離すタイミングが掴めなくて、青空教室を去ったあとも悟飯を掴んだままだった。そしてなぜか悟飯もそれを振りほどいたりせず、トランクスの好きにさせていた。
     舞空術でいつもの修業場に降り立っても状況は変わらず、トランクスは悟飯の手を掴んでプラプラさせたりしていた。
    「トランクス、まだご機嫌ナナメなのか」
    「ナナメじゃない……悟飯さん、勉強教えるの楽しい?」
    「ん?そうだなあ。結構楽しいよ。オレは元々勉強好きだしね。子供たちがこんな状況でも逞しく生きているのがわかって嬉しい」
    「そう、だよね……」
     なんだか恥ずかしくなってきた。
     勉強を教える悟飯も、それを受ける子供たちも、ただ前向きに生きているだけ。人造人間の襲撃に怯えながらも、ただ怯えて過ごすのはいやだと思っている強い子達だ。トランクスから悟飯を奪おうなんて考えていない。
     それなのに、こんな子供染みたやきもちを妬いて子供と本気で言い合いをしたなんて。
     悟飯が学校の先生みたいになるのは構わない。そういうのが本当は向いているひとかもしれないと思っていた。もし人造人間が襲ってこなかったら、孫悟飯はきっと学者になって、教鞭をとることだってあったかもしれないのだ。
     でも、それでも弟子はトランクスだけが良かったのだ。
     悟飯が一番気にかけて、一番期待するのはトランクスであって欲しかった。
    「悟飯さん、ボク以外の弟子ほしい?」
    「え?ううん、考えたこともなかったなあ。とりあえず君以外に弟子をとる気はないけど……」
    「ほんと?」
    「オレはそんなに器用な方じゃないから、君を鍛えるので精一杯だ。オレももっと強くならないとだしな」
     トランクスに掴まれていない方の手で、悟飯が髪をワシャワシャかき混ぜてくる。
     十四歳にやるようなことじゃないと思うのに、トランクスはやめてくれとは言わない。そんなことを言って、本当に悟飯がこうするのをやめてしまったら困る。悟飯だって楽しそうだから、これを甘んじて受けるのは悟飯のためでもあるのだと自分を納得させる。
     いつかトランクスが悟飯より大きくなったら、悟飯の頭を撫でてやろう。子供の頃から闘ってばかりだったという師匠はきっと、髪をぐしゃぐしゃに掻き混ぜられたことも遠い昔のことだろう。
     立派な大人になって、彼の背を任されるような、隣に立てるような男になってやるのだ。
    「ボクが一番弟子だよね」
    「そうだな」
    「ボクが特別だよね」
    「そうだな?」
    「よし、悟飯さん!今日も修業お願いします!!」
    「うん?なんだ機嫌が直ったのか。よし、やろうか」
    「はい!あと修業のあとはうちで夕飯食べよう!」
    「いいのか?ありがとう」
    「明日お昼食べたら、ボクの勉強も見てほしいんだ。そのあとは修業して、また夕飯を一緒に食べよう。あっ!うちに泊まってく!?」
    「急に元気になったなあ」
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