ルビンの壺 生徒と教師。わたしたちの関係はそう言い表される。わたしたちの関係に、それ以外の名前はついていない。
暖かに色づいた街路樹が、はらはらとその葉を落とす。ここ数日で気温がぐんと下がり、冬が近づいてくる足音がした。はばたき学園の生徒として、これで三回目の冬を迎える。きっと次の春を感じるよりも先に、この学園を去ることになるだろう。深呼吸ともため息ともつかない深い息をはぁと吐いてみるも、その輪郭が白く縁取られるにはまだ早かったようだ。緩やかな足取りで通学路を歩けば、後ろから自転車を漕ぐ生徒に追い抜かされる。自転車はなだらかな坂をぐんぐんと登って、あっという間に遠のいた。
コートを着るには少し早い気がしていたが、そろそろクローゼットの奥から引っ張り出してこないといけない。晒された素肌の手足を撫でる風が冷たくて、行儀悪くブレザーのポケットに手を突っ込んだ。肩を縮こませて歩いていると、通り過ぎていった原付きが少し前で停まる。
1934