偏屈探偵と午後のひととき[第二話]現在時刻午後14:38。一匹の小さなネズミの少女が、少女が暮らす街マウストピアから遠く離れたベイカー街までの長い道のりを、両手に大きな鞄を抱えながら、全速力で走っていた。少女が抱えている鞄の中には、高価な煙草、赤ワインが入ったボトルに、真新しい衣類、少々変わった物でダーツの矢が沢山入った箱などが入っている。勿論、そんな代物を少女が使うわけではない。少女よりいくらか歳の離れた友達に贈る為に用意した物だ。
「大変遅れちゃうわおやつの時間にねって約束したのはわたしなのに」少女は息を切らしながら、ベイカー街へと続く賑やかな商店街を駆け抜けた。
時刻は午後15:00。なんとか間に合った少女は、下宿の玄関前に掛かっている呼び鈴を鳴らす。鳴らしてから間もなく、にこやかな顔をしたジャドソン婦人が少女を出迎えた。「あらまぁ、いらっしゃいオリビア様、さぁさ、どうぞ中へあがって下さいな。」オリビアと呼ばれた少女は、大声で「失礼するわ」と言い、大広間へとあがった。
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