怪盗組の邂逅について(諸説あり)とあるビルの一室。倉庫と思わしきその部屋の扉の前に、男が1人立っている。
癖のある髪を首の後ろで一括りにした男は、中の気配を確認するように、扉に耳をそばだてる。
路地裏に面した外付けの廊下、使われなくなって久しいそのビルには、遠くに聞こえるサイレンの音と微かなネオンの光だけが反射していた。
癖毛の男は、できるだけ音を殺してひと呼吸すると、拳銃を片手で構えながら古びたドアノブをゆっくりと回した。
キィ、と高い金属音が響く。
すかさず部屋へと足を踏み入れ、両手で拳銃を構え直す。
「…見つけた」
そこにはドアに背を向けて座る、男がいた。
静かに放たれた言葉に、男はゆっくりと立ち上がり、振り返る。
紫色の髪が揺れる。
積まれたダンボールの上に置かれたノートパソコンの青白い光に照らされたその男は、笑っていた。
2549