【治角名♀】シンデレラにショートブーツ駅に直結したそのショッピングセンターは、その利便性から近隣の学生たちの定番スポットになっていた。
それは俺ら稲高生も例外やなくて、やから俺が休日の午後練の前にそこに立ち寄ったのも、そこで周りの女性客からひとつ飛び出た小さな頭を見つけたのも、何も不思議なことではなかった。
(あれ、角名やん)
白のコートとチェックのスカート、その下から覗く黒タイツに履き潰したムートンブーツ。見慣れない私服姿で『冬物大バーゲン』とでかでか記された靴屋の前に佇むのは、同じクラスで同じ部活の友人、角名倫やった。
角名はすらりとした背を丸め、何やら商品とにらめっこしているようやった。ここからやとよう見えんけど、靴屋の前におるんやからその手の中にあるのも当然靴なんやろう。それを上下逆さにしてみたり何度も値札を確認したり、しばらく迷ったあとそっと商品棚に戻した。その後ろ姿が気になって、なんでもないふりをして声をかける。
2598