みらいのはなし、その2……あの頃は俺もお前も無我夢中で駆け抜けたけれども、本当になんて未熟だったんだろう。だからこそやり遂げることが出来た側面もあるとはいえ、お前は今も、そしてこの先もそれを負い続けていくんだな。……それを、ともに担ってやることができないのが、俺は。
――悔しい、のか、心残り、なのか。
少しだけ遠い、どこかの時間。
「……老けたな」
「そう悪いことじゃない。老いは、生者の特権だからな…、あ、いや、すまん、別に、そういう意味じゃ」
「歳はとってもそういうところは変わらないのな。お前が順当に爺さんになりつつあるなんて、とんでもなく目出度いことだろ?」
「まあ、なあ…正直この年まで五体満足で生きていられるなんて思いもしていなかったが」
「……死ぬなよ、フリック。少なくとも、おれの前では」
「約束はしてやれないが、努力はするさ」
さらに遠くの遥かないつか。
かつて聖戦士が封じた、ヒクサクが求めてやまなかった創世の秘密。
この世界そのものの理と向き合うために彼は幾百あるいは幾千の後に再び過去の洞窟を訪れる。
夜の剣のかつての封印。その更に最奥の闇の中。
生と死の継承者は懐かしい声と背中を押す手の感触に巡り合う。
(――さ、いこうぜ、リーダー)
空耳などではない。空気を震わせることのない声ならぬ声は、間違いなく、最早とうの昔に生を閉じている彼のものだ。
ああ、ここに居たのか。だから、道理で。
お前を、食わずに済んだのか。
お前の死を知ることなく、おれはこの長い年月を過ごすことが出来たのか。
久しく忘れていた形に口角が上がる。