未だ残暑極まる秋のはじまり、都会の街並みは変わらずエンジン音、信号音、人の騒めきが互いを打ち消すように響めき四散していく。
その中を青年は諸共せずカツカツと靴底と地面を子リズムよく鳴らしながら進む。
自動販売機の横を過ぎたら凸凹の地面…その先を10メートルほど進んだら右に曲がる。
青年は歩みと頭の情報とをなぞるように繰り返した。これがこの道に通ずるルーティンである。
人通りを抜けてパイプが剥き出しになってる壁と壁。厚ぼったい薄墨の路へ行き当たり青年はやっと息をついた。
人の多い所では呪力感知も儘ならない。所定にたどり着くのは慣れてきたけどどうにも気が張って仕方ない。青年は独り言ち、ここを指定してきた相手を待つ。
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