ランサーが帰宅したのは、食事も入浴も、歯磨きまですっかり終えてしまって、いよいよもう寝てしまおうという頃だった。
玄関ドアの開く音を耳ざとく拾ったセタンタが、ピクンと顎を跳ね上げリビングを飛び出す。アーチャーはその獣めいたしぐさに笑いを堪えながら、セタンタを追って一緒にランサーを出迎えた。
はしゃぐ息子に纏わりつかれ、苦労しながら靴を脱ぐランサーから、鞄と土産らしき紙袋を受け取ってやる。ランサーはひょいとセタンタを抱き上げてしまうと、疲れを感じさせない軽い足取りで廊下を進んだ。
「いい子にしてたか?」
「うん」
「アーチャー怒らせてねぇか?」
「うん」
「……なんだ、ずいぶん眠そうだな」
時刻はようやく夕方から夜へ移ろうという頃だが、それにしては問いかけに返る声がぼやけていると気付いたらしい。ランサーがセタンタを抱えなおし、彼の幼少期にそっくりな顔をのぞきこむ。するとセタンタは小さくあくびをしながら、やはり眠気の滲む声で答えた。
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