恋に恋して、芽生え始めて其れは、本当に突然の出来事だった。
友達に誘われて、嫌々ながらも付き合いで行ったライブハウス。バンドになんて興味無いから、見るだけ見て帰ろうと、そう思っていたのに。
「晶子、見て!このバンド、サックスの人がいるんだって。珍し〜」
そう言われて顔を上げた妾の目に飛び込んできたのは、オールバックにした黒髪にご機嫌そうに細められた目を持つ男だった。
男の瞳は無作為に見開かれたり、また細められたりしている。その隙間からチラチラと覗く翡翠色が、妾の心を射抜いた。
「……」
曲が進んでいく。次の曲、また次の曲、とどんどん移り変っていく曲なんて全く聞こえないほど、妾はその男に釘付けになっていた。
「晶子、帰るよ〜……晶子?」
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