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    1874Hecma

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    斎山(支部とどっちが回るかなテスト)

    #BL
    #FGO
    #斎山
    mtFuji

    ほんと、これからどうなっちゃうんだろう、と思ってる。まばたきをゆっくりと二回。猫ちゃんだったら、愛してるの合図なのに。きみの閉じた目蓋には何一つ届かない、恥ずかしいからね。いいんだけど。ほんと、これからどうなっちゃうんだと思う?答えはない、口にすら出していないから。真夜中へ、そっと耳を澄ます。微かな衣擦れと、何がしかの電化製品がぼくらの眠っている間も働いている音を聞く。でもね、ちょっとお腹が空いています。どうしよ、鳴っちゃったら。恥ずかしいな。きみの目蓋がぴくんと動いて、さっきさんざん涎をつけた唇がもぞもぞとして、低く唸り声を出すのを頭に思い浮かべれば勝手に唇が震える、キスがしたいんだと思う。髪の毛を触りたい、昔はもっと長かった髪の毛。写真でしか見たことないんだけど。また伸ばして、プードルみたいにしてくれないかな。目蓋の丸いのが可愛い、だってその中に眼球が入っているから。鼻の先で、きっとよく見たら鼻毛がふうふう揺れているんだと思う、だって息をしているから。きれい好きなのに、そういうところちょっと生きている感じ、で、可愛い。うん、そう。愛を確信する。いとも簡単に手に入るので、すっかりロッカーがいっぱいになっている。起きないかしら、起きなくたっていいんだけど、でも二度と覚めないのは悪夢だな。こんなところで突然きみのこと失いたくないですよ、だってまだ服も着てないし……職場にも付き合ってるって言ってないじゃないですか、きみもそうでしょ。せめて服を着て、お互い両親に挨拶して、驚かせて、仲間内で酒でも飲んで、それから死のうよ。せめてさ、それくらい……。起きないかしら、と見つめてみる。何も届かないのに、でも実は起きてたりしないかな、どう?
     結局、彼を起こしたのはぼくの爪先だった。ほんの身じろぎで脛を蹴ってしまって。眠っている人類が覚醒のために出す鳴き声はいつも明瞭や明白から程遠く、不規則で妙なおもちゃみたいで、可愛い。ぜんぜん、可愛くないから、可愛い。
    「すみません、起こしましたか」
     何見てるんですか、えっち。なんて、普段のきみならばちょっと口角を上げてからかってみせるんだろう、そんなこともできなくて、唸って、頭を抱えて。枕にしている腕の付け根、脇からどうにも消しがたい男の匂いをさせて、強引で勝手を演じながら抱き寄せようとする、ぜんぜんかっこよくない、きみがかっこ悪いと胸が詰まるんですよ、可愛いから。何しても胸を詰まらせる、水気無しで食べるカステラみたい、きみが可愛いってだけで死んでしまうかもしれない。可愛い。
    「寝ましょうよ……」
    「おなか空いちゃって」
    「……コンビニ行きます……?」
    「いや……」
     寒いしね。何が食べたいか分からずに回るコンビニの真っ白い店内の虚しさ、すごく現代的で途方もない、悲しくなるから嫌かな。
    「冷凍庫にさ、おうどんあったでしょ、茹でようよ」
    「あ、った、かな……」
     裸の腕を伸ばす。男の汗の匂いがする、可愛い。もさもさと毛が生えている。今度、そのおっぱいの間を舐めたいな、いいかな、いいでしょ?わあわあ言いながらきっと許してくれるに違いない。おうどん、と覚束ない目を擦りながらつぶやく。そう、おうどん。
    「おうどん……茹でますかあ……」
     こんなに身動きが取れないときでなかったら、抱きしめていたと思うよ、よかったね。よかったね、好きで、大好きで、可愛くて、あばらの何本かを折っちゃうかもしれないくらい、好き……。ぼくも男の子なので、すこしは加減をしてるんですよ。今後は気を付けてください。
     キッチンの電気をつけて、ついでに拾ったパンツを洗濯機に入れた。ふたりでスエットを着た。この前この部屋に泊めた日はまだ、スエットの上下を二人で分け合って、べたべたと触ったり抱きしめるたびに肌の間が汗ばんだくらいだった。今日もわざと間違えて、きみも何も言わないしどうせ暗くて見えないし、下着に勝手に足を通していた。気持ち悪い、次はやめよう、でも多分次も興味本位でやってしまうと思う……人は愚かなので。水を溜めた鍋にきみが冷凍のおうどんを二玉放り込んで、換気扇とアイエイチの電熱器のスイッチを入れる。きみが眠たげにおうどんを茹でてくれている間、何にもすることがない。換気扇がぶうんと回っている。こんな真夜中に働かせて悪いねえ。スエットの分厚さを感じる腕へ擦り寄って、腰へ手を回す。きみの目は当然、鍋にくぎ付け、声だけが寄越されて、頷く。何でもないから抱きしめているんじゃないか。何でもないんだもの。きみの横顔を眺めてみたりする、だって他にすることがない。真夜中におなか空いたからっておうどん茹でてくれる恋人がいて、その顔を眺める以外、他に優先すべきことがあるかい。
    「明日なにします?」
    「起きてから考えよう、きみの顔見る以外、今やるべきことがないし」
    「もう、何ですかそれ」
    「それは、おいおい分かるよ」
    「何ですか、急に年寄りぶっちゃって」
     金曜日の夜なんだから、そりゃあね。おまけに真夜中だし。まばたきをゆっくり二回、きみの目は変わらず、鍋にくぎ付けのままだった。それでいい、こんなの、分からなくたっていい。明日何をする、なんて、そんなの明日決めればいいじゃない。
    「斎藤くんは明日何かやりたいことがあるのかい」
     つい数時間前までノー残業デーの金曜日で、一緒にごはんを食べてお風呂に入ってから心行くまでセックスをして小休止のつもりで眠って目を覚ました真夜中に、立てなくちゃならない計画なんて一体どんな野望なんだろう。新婚旅行で世界一周とかしたいタイプ?まさかね。
    「洗濯物して、掃除機かけて……晴れてたらシーツ洗濯したいです」
    「それから?」
    「そのあとは……明日決めていいですか」
    「うん」
     鍋ではうどんが沸騰を始めたお湯の中で踊っていた。ざるを用意して、冷蔵庫からパスタ用のオイルソースを出す。油が分離しているから、思いっきり、男の力で振って、ぐちゃぐちゃになるソースにさっきの浮かれたセックスを重ねていた。食べたらしたくなるかな、でももうすっからかんだからなあ……。こんな色狂いのような考えを露ほども知らない年下の男はうどんの茹で具合を真剣に見極めている。真夜中におうどんなんて、と考えている間にすっかり腹の虫が疼いているような横顔だった。第一、きみ、若いんだから案外入るんでしょ、いいねえ。おうどん、もう茹で上がってしまう。本当はおうどんなんてどうでもよかったのかもしれない、嘘、すごくお腹が空いている。きみの可愛い耳を齧りたくなるくらい。
     たとえば、たとえばの話だよ。この年でたとえ話をするなんてけっこう焼きが回っていると思うけど真剣に聞いてほしい。ぼくらがおじいちゃんになって、つまりぼくがおじいちゃんになってしまっても、真夜中に目を覚ましてお腹を空かせていたら、こうしておうどんを茹でてくれたりするかい。愛を確信しているので、きみはきっとそうしてくれるのだと思う、それがいま、ちょっと怖い。できればその前にきれいに別れたいし、別れられるのか、ない知恵、ない頭をひねっているところ。何が怖いって、自分が怖いんだ。きみを手放せない自分が一等、こわい。分かるかい、この予感、確信、絶対に傷つけてしまう、その審判の日がいつか来るということ。怖い、でも、ぼくはきっと裁かれねばならない、この愛のことを。
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