特異点にレイシフトして現地調査中、崖から足を踏み外して穴の底へ滑り落ちてしまう道満。そばにいたマスター、咄嗟に道満の手を掴むも引き上げられる筈もなくそのまま一緒に穴の底へ。
同行中の若モリが慌ててカルデアに連絡、何名かのサーヴァントが駆けつけるも穴の底は深く暗く何も見えない。必死に呼びかけるもただ自分の声が穴に大きく反響するばかり。パスは繋がっているのでマスターの無事はわかるが、それにしても怪我だったり道満と一緒という事もあり、心配は尽きない。
崖から崩れ落ちた2人、咄嗟に道満がマスターを庇う体勢を取る。自分が下になればとりあえずは大丈夫だとマスターを抱え込む。マスター、抱え込まれたはいいがコレじゃ道満が背中から思いっきり地面にぶつかる事になる、その上地面がどうなっているか分からないので咄嗟に礼装を起動させ防御を張る。
110kg+マスターの体重ともなれば着地時のダメージもかなりのもの。重く強い圧が腹部に掛かり咽せる。道満、舌を噛んだのか口から血が出ている。ダメージは想定より浅いようでひとまず安心した。
穴の底から上を見上げる。僅かに光が差し込むものの、ここを登るにはあまりにも遠く、ロープを垂らすにも遠すぎる。マスターだけ上にぶん投げるにしても危ないし、そのやり方ではそもそもマスターが納得しない。カルデアとの通信はかろうじて繋がる、がすぐ途切れる。これでは繋がっていないと言っても良い。マスターが道満の怪我を礼装で治す間、彼はせっせと周りに落ちている枝をかき集めて火をつけていた。
これで周りが多少明るくなった、ついでに暖かい。底はそれなりの広さがあるものの、やはり出口は上しかなく、周りに枯れ枝と落ち葉と石ころしかない。土に湿り気はなく、からっとした黄土色をしている。
ここで助けをひたすらに待つか。いや、それはない。
道満、式神の1つに白鷺を元にしたものがある。それの上にマスターを乗せてみる。式神は動く。マスターはそれで上に戻せば良いが、自分はどうする?
マスターに事情を説明し助けを待つか、否、他人の力なぞ借りたくはない。自力でなんとかしたかった。したかったが、思いつかない。
一旦マスターだけ上に上げる事にした。抵抗したが聞き入れず無理矢理上に返した。自分は救いのない地の底に。辺獄には到底足らないが、救いを待つ身という意味では同じかもしれない。
上に戻されたマスター、無事で良かったと歓迎されるが道満がまだ下に取り残されていることを訴える。焦りと怒りがないまぜになった調子でどうしようと狼狽える。
後ろから長髪の男性が1人、晴明だった。あれなら式神さえあれば1人で出てこれますよ、と言う。彼が言うならそうかもしれないが、道満怒りそうだな…いや、晴明さんの力を借りた方がよっぽど怒るか?そう思って待つ事にした。
しばらくして若干ボロボロになりながらも下から這い上がってくる道満。マスター、今度は上のもっと安全な場所に連れて行ってからぎゅっと抱きしめる。良かった良かったと土と泥に塗れた道満を見ながら言う。道満、マスターを軽く撫でながら晴明を睨む。何もよこさなかったのが腹立たしくもあり、彼の手を借りるまでもなかったんだぞという気持ちもあり、とりあえず睨む。晴明、からからと楽しそうに笑っている。
おわり