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    羽上識

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    羽上識

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    れめししです
    敬語を喋る社会的なレメが見たいという思いがあり、めっちゃ敬語喋ります。それとシシさんをすごいかわいく書きすぎてしまいました。
    解釈違い注意

    待ってて、ダーリン 配信者を生業としてるオレは基本的に他の配信者とのコラボや案件はめったに受けない。観測者たちがオレ以外に意識を向けるのに心底腹が立つから。そんなオレに2カ月ほど前、オレがホラーゲームにはまるきっかけとなったゲーム会社から案件依頼が来た。新しくゲームを発売するから先行プレイを配信でやってほしいというもので、いつもであれば速攻で断るけど、配信で何度もこのゲーム会社のことが好きだと言ってたということもあるし、断る理由が無かった。依頼のメールに承諾の返信を送って、打ち合わせを重ねていく中で案件配信の詳細が決まった。

    「敬一君!聞いて聞いて!オレずっと好きだって言ってたゲーム会社から案件依頼来たんだ!」
    「おお!良かったじゃねえか。じゃあお祝いに今日の晩飯は叶の好きな料理にしてやるよ。何が良い?」
    「うーん…じゃあハンバーグ!オレも手伝うから一緒に作ろうな?でもその案件ちょっとめんどくさいとこがあるんだよな…」
    「めんどくさい?オレあんまりゲームとか配信とか分かんねえけど、叶の部屋でいつも通りゲームすればいいだけなんじゃねえの?」
    「それがね、今回は違うんだよ。先行プレイだから外部に必要以上の情報漏らしちゃいけないから念には念をってことで、本社に来て、配信してくださいって言われたの」
    「あー、あの会社って本社は京都だっけ?」
    「そー。だから京都まで行かないといけないのが、ちょっとだけめんどくさいなーって。でもせっかくもらった案件をそんな理由で蹴るわけにはいかないし…」
    「叶って割と常識的だよな。そんなのめんどくさーい、って言いそうなのに。偉いな」
    「敬一君、オレも一応大人だからな?ちゃんとしないといけない相手にはちゃんとするぞ」
    「ごめんごめん。それで?京都にはいつ行くんだ?」
    「んーと確か…3月10日!」
    「3月10日か…もうすぐだな。」

     そう言って敬一君は冷蔵庫にかけてあるカレンダーに予定を書き込む。冷蔵庫のカレンダーはオレたちが付き合い始めてから増えたものだ。お互いの用事をそこに書き込んで、予定が合えば敬一君の家に来たり、外でデートしたり。カレンダーに予定を書きこんで、いつ会えるかを考えてる敬一君の楽しそうな横顔を見るのはすごく好きだ。

    「あ…」
    「ん?どーした敬一君。オレと会う日に予定入れちゃった?」
    「いやちげー…何でもねえよ」
    「敬一君。オレたちの間に秘密は無しだぞ。無理矢理暴いたっていいけど、オレはできるなら敬一君から言ってほしいな」
    「うー…その…女々しいって思われるかもしんねえけど…3月10日、オレ達が付き合って1年の日なんだよ…今カレンダー見たらふと思い出してさ……あー!やっぱなしなし!叶も仕事だし、記念日とか女々しいことやんねえよな!」
    「ごめんね、敬一君。オレ覚えてなかった。1年記念日だって…オレは敬一君とお祝いしたいと思ってるけど、敬一君は?」
    「……お祝いしたい…でも叶の仕事は邪魔したくねえ…」
    「よく言えました!偉いぞ敬一君!オレの案件配信は昼頃からだから夜にはここに帰ってこれるはずだ。それまで待てるか?」
    「待てる…でも叶疲れるだろ?無理させてねえか…?」
    「無理なんかしてないぞ。敬一君との時間は大事にしたいからな。ほら、おいで」
     
     オレはそう言って、下を向いてうつむている敬一君に対して腕を広げる。敬一君は少し戸惑いながらもオレの胸のところに頭を預けて、背中に腕を回してくれた。ぽんぽんと敬一君の背中を叩きながら、頭を撫でる。今日は髪をセットしてないみたいだから、髪がサラサラで撫で心地が良い。
     敬一君は甘えるのが下手だから、中々本心を言ってくれないことが多い。別に敬一君の気持ちなんて、オレには手に取るように分かるけど、どうせなら敬一君の口から聞きたい。わがままも甘えも言いやすいようにオレから言うように促して、少しずつ練習してる最中だ。それに今回は完全にオレが悪い。敬一君は記念日を気にしたりするような素振りを今まで見せたことが無かったから。オレも気にしてなかった。敬一君には悪いことをしたな…

    「でもちょっと良いかもな。お前を待つの」
    「ん?何が良いんだ?」
    「お前いつも配信深夜にやるだろ?その時間オレはもう寝てるからリアルタイムで配信見たことねえんだよ。でも案件配信が昼からだったら、オレも見れるなって。ちょっと楽しみかも」
    そう言ってオレの胸に預けていた顔を上に向けてにぱっと笑った。かわいすぎる。一瞬で早くなった鼓動が敬一君にバレて、からかうような笑みを向けられた。ちょっとムカついたから髪をぐちゃぐちゃに混ぜた。敬一君も仕返しのようにオレの脇をくすぐってきて、お互い笑いが止まらなかった。
     その後一緒にハンバーグを作って、食べて、お風呂に入って、一緒のベッドに入った。

    「晩飯作って家で待ってるから。しっかり仕事しろよ」
    「うん、ありがとう敬一君。オレも京都のお土産買って、すぐに帰るから。配信見ながら楽しみに待ってて」
    「京都のお土産か…漬物とか、いい、かもな…」
    「じゃあお土産に合わせて和食とかどうだ?」
    「そうだな……準備、しとくな……わりぃ、もうねむい、おやすみ…」
    「おやすみ、敬一君」
     そういってオレは眠っている敬一君の額にキスを落とした。

    「本日はお忙しいところわざわざ京都までお越しいただいて申し訳ございません。」
    「いえ、昔から大好きなゲーム会社からご依頼いただけると思っていなかったので、嬉しい限りです。本日はよろしくお願いします」
    「そう言っていただけると嬉しいです。それではこちらのお部屋で時間になりましたら、配信を始めて頂ければと思います」
    「分かりました。ご丁寧にありがとうございます」

     京都のゲーム会社のビルに無事着いたオレはものすごい興奮していた。やっぱり自分の好きな会社に入れるというのは、ゲーマーなら誰もが夢見ることなのではないだろうか。こういう機会に恵まれるなんて、やっぱり世界はオレを中心に回ってるんだなと再確認しながら、椅子に座って、配信の準備をする。いつもは淡々と行う準備も今日は画面の向こうで敬一君が見てくれてるんだと思うと、少し浮ついた気持ちになる。
     スマホのバイブが鳴って、通知が画面に映る。送信元は敬一君。メッセージの内容は『今テレビにつないで配信見る準備整えた。配信頑張ってな。応援してる』とあった。顔が思わず緩んでしまいそうになるのを引き締めて『敬一君に楽しんでもらうためにオレ頑張るから、楽しみにしててくれ!応援ありがとな!』と返信して、スマホのバイブ機能を切る。配信中にバイブ音が入ったら、ノイズになってしまうし、今回は案件配信だからいつもよりしっかりする。
     全ての準備を整えて、配信開始1分前。賭場では緊張なんかしないのに、今日は案件ということもあるからか少し緊張する。でも家に帰ればオレのかわいい恋人が美味しい料理を作って出迎えてくれる。そう考えると緊張も和らいで、いつものテンションに戻ってくる。さあ、配信開始だ。
    「ゴキゲンよう観測者の諸君!こちらレイメイだ!」

    「お疲れ様です、レイメイさん。良い配信でした。上層部もレイメイさんに頼んでよかったと喜んでましたよ!」
    「そうですか、ご期待に添えたようで何よりです。私としても面白いゲームだったので、楽しくプレイできました。改めて今回は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。」
    「いえいえ、こちらこそありがとうございます。正式リリース後もよければ配信してください」
    「もちろんです。それでは本日は失礼します」

     担当者と軽い挨拶を交わして、ビルを出る。仕事が終わった安心感からか肩の力が抜ける。スマホを取り出して、電源を付けたら敬一君から『お疲れ様。配信すごい面白かった。あんまりゲーム分かんねえオレでも楽しめたし、今回の案件大成功なんじゃねえの?今から晩飯の準備する。気をつけて帰ってこいよ』とメッセージが入ってた。配信を楽しんでくれてたみたいで良かった。変装のためにつけたマスクの下の緩んだ顔を隠しもせずに『楽しめたみたいで良かったぞ!お土産買ってすぐに帰るからもうちょっとだけ待っててな!』と返信して、少し早歩きで事前に敬一君に頼まれていた漬物屋に土産を買いに向かう。
     オレの髪と身長はやっぱり目立つのか変装をしていても、何人かの観測者が声をかけてきた。早く漬物屋に寄って帰りたいオレは声をかけられる度にガン無視して、早歩きで向かう。漬物屋はゲーム会社からそこそこ近い場所にあって、思ったより早く着いた。京都らしい木造の店構えで中に入ると漬物の少し癖のある匂いがする。

    「この千枚漬と大根と…あと何だったっけな…あ、しば漬お願いします」
    「はい、合計1724円になります。ご自宅用ですか?」
    「みや…自宅用です。今日新幹線で東京まで持って帰るんですけど、常温でもいけます?」
    「はい、それぐらいでしたら大丈夫だと思いますよ」
     ご自宅用か、と聞かれて、前のようにただの友達のような関係性だったら土産用だ、と答えていたと思うけど、オレが今から帰る場所は恋人の家だ。それなら土産というより自宅用だろ。…なんか出張先で妻にお土産を買って帰る旦那みたいで良いな。丁寧に袋に詰められてはいるけど、ラッピングも無い漬物が入った袋を受け取って店を出る。これであとは駅に向かって帰るだけだ。あー早く敬一君に会いたい。

     駅のホームで数分間待っていたら新幹線が来て、当たり前のようにグリーン車の席に座る。東京に着くまでは2時間程度。到着時間は18時30分ごろだから、19時30分までには敬一君の家に帰れるはず。少しだけど疲れをとるためにも寝ておこうと思って、目を瞑り、新幹線の揺れに身を任せる。
    新幹線が発車して1時間ぐらいで目が覚めた。もう少し寝ていたかったけど、起きてしまったものは仕方ない。今日の案件配信の反応でも見るかとスマホを取り出したとき、車内アナウンスが流れた。
    「――により前の列車が停車しているため、本列車も停車いたします――」
     起きたばかりの頭にアナウンスが上手く入ってこなかったけど、何かしらの理由で新幹線が停車した。早く帰りたいオレにとってはイライラさせるものでしかない。

    「チッ……何で今日に限って止まるんだよ…」
     新幹線が動かなくなってもう3時間が経つ。このままだと帰る頃には日をまたいでしまうかもしれない。敬一君からは『料理のことは気にしなくていいから。気をつけて帰って来いよ』とだけ連絡が入ってた。オレが心配なのは料理じゃなくて、敬一君なのに。本人はあまり態度に出してないつもりだったけど、今日のために美味しい和食を調べたり、プレゼントを探したり、楽しみにしているのは丸わかりだった。そんな敬一君を家で1人待たせているのはどうしても心配だ。上手に甘えることができないから、早く帰ってきてとも言えないだろうし。
     結局新幹線が動いたのは停車してから4時間が経とうとしてたときだった。東京に着くと時刻は22時30分。今から急いで敬一君の家に向かえば、日付が変わる前に間に合うかもしれない。そう思ってタクシーを拾って、できるだけ早く敬一君の家に向かわせる。

    「敬一君ただいま!ごめん!」
     もうずいぶん前に渡された合鍵を使って、玄関の扉を勢いよく開けた。オレの言葉に返事は無い。大きな声で言ったつもりだったけど、やっぱり待たせすぎたかな。そう思いながらリビングの扉を開けた。和食の良い匂いが広がっていたけど、敬一君の姿は見えない。そういえばこの時間は敬一君はもう寝てる時間だ。トレーニングと食事制限を趣味としてる敬一君は、健康管理のためか大体日付が変わる前には寝てしまう。起こしてしまうと申し訳ないから静かに2階への階段を上りながら、寝室に向かう。軽くノックをして、寝室の扉を開けると予想通り敬一君はベッドで布団を被って寝てた。

    「敬一君ただいま。ごめんね、こんな時間まで待たせちゃって。ご飯も準備してくれてたのに。ありがとう」
    「ん……叶…?おかえり。ごめんオレ寝てた…頑張ってお前が帰ってくるまで待とうと思ったのに…何か、もやもやして、リビングに1人でいるの、なんか、いやで…ごめんな…」
     そう言ってベッドに寝ころんだままうつむいた敬一君の手をオレは思いっきり握った。

    「敬一君は悪くないから謝らないで。遅れたオレが悪いんだ。ごめんな、1人にさせて。敬一君もオレに怒っていいんだぞ?」
    「悪いのは止まった電車だろ…だから叶はなんも悪くねえよ。何でオレ達謝ってんだろうな。よく考えたらどっちも悪くねえじゃん」
    「確かにそうだな!何で謝ってんだろ。そうだ、ちゃんと頼まれてた漬物買ってきたぞ!敬一君はもうご飯食べた?」
    「いやまだ。その…お、お前と一緒に食べたかったから。ほら、まだ日付変わってねえし…」
     あーもうかわいい。そう思いながら、オレはまだベッドに寝ころんだままの敬一君をお姫様抱っこした。敬一君ほど鍛えてるわけじゃないけど、頑張ればこれくらいできる。

    「えっ、ちょ、待てって叶!危ねえぞ!重いだろ!?」
    「敬一君ならオレは何人だって運べるぞ!そんなことより、ほらほら早くご飯食べよ!オレ敬一君のご飯ずっと楽しみにしてたんだぞ?」
    「そ、そっか…あのさ、オレ叶にプレゼントも用意したんだ。受け取ってくれるか?」
    「敬一君からのプレゼントだったらいくらでも受け取るよ」
    「そりゃどーも。でもその前に晩飯だな。キッチンまでしっかり運んでくれよ?ダーリン」
    「ッ!…お安い御用だぞ!ハニー!」
     そう言ってオレは敬一君の唇にキスを落とした。まだまだオレ達の記念日は始まったばっかりだ。
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