僕を騙して 男女の愛は永久には続かない。
幼い頃から知っている事実だった。だから僕は恋なんかしないし、彼女なんてできるわけが無いと思っていた。なのに今がある。
隣を見るとこちらを向いて可愛らしい寝顔で寝ている彼女がいる。僕を引っ張って、支えて、守って、無償の愛をくれる彼女。僕が人殺しにも関わらず。何でそんなふうにしてくれるの?と尋ねる度に彼女…詩音は「悟史くんを愛しているから」と簡単で単純な理由を返す。でも、詩音だっていずれは離れてしまうのだから。僕は彼女を愛しているけれど、どこか本気にしていない節があった。
僕らの周りでも結婚する人が増えた。結婚指輪をつけて、幸せそうに笑う同僚を僕は毎日見ている。そしてその同僚から「お前も早く結婚すればいいのに。」と言われる。長年付き合っている彼女がいる事を知っているからそう言ってくれるのだろう。しかし僕はプロポーズどころか、結婚の話にすら踏み切れなかった。
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