1 気づいたら口からこぼれていた。意識するまでもなく、自然にそう思った。
「養子とろうか」
視線の先にいる三井の目が大きく見開かれる。ようへい、と呼びかける声は震えていて、自分の全てを懸けてこの人を守ると誓ったことを思い出す。
「俺がただ、アンタと幸せになりたいんだ」
唇が緩く弧を描き、見開かれた眦がキュッと細められる。笑ってるんだか泣いてるんだか分からない表情で、涙は出ていないのに思わず指で拭う。
「バカ、泣いてねぇよ」
「アンタ、泣き虫だから」
「うるせぇ。大体はお前が原因だろ」
「うん、だから責任取らせて」
肩を引き寄せ、そっと口付けをする。三井は触れるだけのそれに肩を震わせ、咎めるように水戸を見つめた。
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