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    ごまもち

    @goma_hn

    ごまもち(@goma_hn)のポイピクです。

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    ごまもち

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    あまねね(花寧々)転生ネタ
    ※R15くらい

    雰囲気小説です。とある絵本を思い出して書き殴ったものなので色々雑!


    ▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

    波が水泡を纏って不規則に、でも穏やかに揺れるのを、砂浜からじっと見ていた。

    「ねえ おねーさん、ここで何してるの?」

    ゆっくりと声の主の方に振り向く。大学生くらいに見える彼は白と黒を基調としたラフな格好をしていて、それは綺麗な黒髪によく似合っていた。

    「ふふっナンパかな?若いねえ〜」

    波に向き直りながら、そう揶揄い答えた。

    「若いねって…おねーさんだって俺と10も変わらないでしょ」
    「そう…かもね。でも、違うのよ。君が思ってるより、もっと、ずーっと、色んなものを見てきたんだから」
    「…そうなの?」
    「うん」

    彼には何のことだか分からないのだろう。
    もう何年も前の話。此岸と彼岸の境界を超えてしまった罪か、罰か。私は花子くんと過ごし、別れたあの日から、記憶を持ったまま転生を繰り返している。
    まるで、昔に見た絵本のように。100万回なんて回数は繰り返していないはずだけれど。

    何度も転生したって、何度も探したって、花子くんには逢えなかった。結んだ縁も、とっくに切れていたのかもしれない。

    (私だけ記憶があって、どこにも居ない彼を必死に探して、馬鹿みたい。約束した"いつか"はどこに行ったらあるの?どこに行ったら見つかるの?花子くんのばか…──)

    忘れたくても出来なくて、思い出して苦しくなって。ぶつける先なんて何処にもない無力感に耐えられない時期さえあった。
    けど、もう流石に待つのも慣れたかな。ここまで来たらいつまでだって待ってやるわよ!という気持ちだった。

    今日もあの校舎から見る夕焼けが、少し透けた黒い身体が頭に浮かんだから、夕日が綺麗なここに来てしまった。
    ……ここに来るのも、もう5日目になるけど。

    気づけば彼は隣にしゃがみ込んで、私と同じように海を見ていた。
    波が行き交う音と、遠くでかもめが鳴く声だけが耳に入る。彼の少し大人びた横顔に心臓が高鳴って、静かな空気がちょうど冷ましてくれたように感じた。

    「おねーさん、俺のタイプかも」

    なんて言って、少し細めた目で見つめられたって、コロッと転がるような齢でももうないというのに。

    「ナンパの続き?ごめんね、私はタイプじゃないかな」
    「え〜おねーさんの面食い」

    面食いじゃないです〜、なんて軽く言い返すと、ふ〜ん?ホントかなあーと、尖らせた口で如何にも怪しげに返されたから

    「でも、嫌いじゃないよ」
    「…!ホント?」

    …なんでそんな嬉しそうな顔するのよ。

    「ほんとだよ」
    「んー…でも、嫌いじゃないイコール好き…じゃないの?」
    「そうねえ…まだ途中?ってとこかな」
    「なにソレ」

    彼はくふっと幼く笑って、砂浜に腰を下ろしドカっと座った。
    私も足が痺れてきたから、その横に腰を下ろした。

    「じゃあ、君の好きなものはなあに?」
    「俺の?」

    少し考える様子を見せたあと、「あっ」と言って彼が何かを上着のポケットから取り出して見せた。

    「これね、俺の宝物のひとつ」
    「…ビー玉?」

    たぶんビー玉だと思うそれは、夕陽と海の反射で淡く蒼く、キラキラと輝いて見えた。

    「そう!ラムネの瓶に入ってるやつ。本当なら気にせず捨てちゃうと思うんだけど、これだけはなーんか捨てられなくてさ」
    「…どうして?」
    「どうして…だろうね。宝物にしてからずっと、この違和感が何か、探してたんだ」

    彼はそう言うなり立ち上がって、その宝物を勢いよく海へ放り投げた。

    「えいっ」
    「えっ!」
    「おおー、よく飛んだね」
    「え、あ、いいの?宝物じゃなかったの?」

    ついさっき宝物といったそれは、綺麗な放物線を描いて、チャポン と軽い音と共に沈んだ。
    宝物…って、何だっけ?と混乱してる私を置いて、隣の彼はケラケラと笑っていた。

    「あー、いいんだ!すっきりした!ねえおねーさん、見てた?」

    彼は大きくて綺麗な、ガラス玉のような瞳を輝かせて、ワクワクしているかのような、まだ幼い少年のような爽快な笑顔で振り向く。

    驚きで呆然としていた私は、その彼のガラス玉が、瞬き2つも数えないうちに目と鼻の先まで来ていたことさえ、気づかなかった。

    ……あれ、彼ってこんなに喉仏とか、腕とかしっかりしたヒトだった?なんて呑気に考える。

    「俺ね、あれを今まで捨てられなかった答えが、やっとわかった気がするんだ」

    温(ぬる)んだ息がかかる距離にいるせいで、昔と変わらない透き通るような深い琥珀色があまりにも近いせいで。熱く、緩々と揺れるその瞳から…目が、離せない。
    今更距離の近さに驚いて、ドギマギする。

    「…なん、だったの?その、答え」
    「…おねーさん」
    「……ねぇ、ちっ…ちか」
    「もうヒントはいいでしょ?答えてよ。ねえ、おねーさん、なんでしょ?…………………………ヤシロ」

    ハッと目を見開けば、頬に柔らかくて湿り気のある感触と同時に、ほんのりと紅い耳朶が視界に入る。
    瞬間、 あ、やっとくれた。…なんて思ってしまう。

    自覚したら、そっと離れる彼の顔が何だか大人っぽくて、見ていられなくなった。顔も、そっと彼の手が添えられた肩も熱い気がする。
    思わず真っ黒な髪の後頭部に手を回して自分の肩に寄せるけど、耳に髪が当たって擽ったい。

    「答えてよ」

    ちゅ、と耳から頸動脈を沿って、鎖骨にかけて、軽く喰みながら擦り寄ってキスされて。彼からの好意が、ダイレクトに流れてくるようで
    ……甘くて、溶けそう。

    どうしようもない愛おしさとゾクゾクとする羞恥心が、底から湧いてくるような感じがした。
    ドキドキなんてものじゃない。ドッドッと速く煩い、自分の心臓の音しか聞こえない。
    ハァ、とひとつ呼吸をした。甘く痺れそうな頭を精一杯正気に戻して、掠れそうな声でそっと応えた。

    「うん………はなこくん」
    「!…ヤシロ、ヤシロ…?ホントに?」
    「何よ今更……っん!?」

    今度は私の後頭部に手を添わせて、深く口付けられた。空いていた隙間からぬるっと熱いものが入り込んで、突然のことで苦しいけど、嫌じゃなかった。

    「…っは、ヤシロ、…っ」
    「ん……」

    何年待ったかな。何回、待ったのかな。
    でももう、こうして会えたなら、こうして熱を感じられるのなら。今までの全てなんて、どうでもいいか。

    自ら彼の熱い舌に、自分のそれを絡ませる。生きてる。暖かい。嬉しい。
    触れた頬から足先まで、溶けてしまいそうな頭で必死に絡ませて。もっと深く深く、どこまでも交わりたくて。
    今までの分まで背中からぎゅっと抱きしめて、互いに熱を求め合った。


    「…はっタイプじゃないって言ったくせに」
    「タイプじゃなかったの…けど、好きなの。今も、昔も。おかしくなるくらい、大好き」
    「!」

    耳まで真っ赤にさせてほんと、こっちからの好意には昔っから弱いんだから。
    待たせた分だけ…ううん、それ以上に愛してよね!

    「花子さん、花子さん。私の願い…──」
    「…いいよ、叶えてあげる。もう花子さんじゃないけど、ヤシロが望むなら いくらでも」

    俺の一生かけて。
    ただし──

    「お代はカラダで、払ってもらうよ♡」
    「………………えっ!?」


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