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    とーにょ🧸

    @kaka_kuma02

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    🧪🍃【Alexandrite】のファンアート

    発行元 粥(X:@okayu_umaimai)
    Pixivサンプルページ: https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23035059
    いずれ続きの新刊が出るので、みんなで楽しみに待ってましょうね((o(´∀`)o))

    🎄MerryChristmas🎄

    私の好きなものは「祭りに来たのなんていつぶりだろうなぁ」

    ベランダからベランダへ渡る色とりどりの旗、きれいに並んだ花、きらきらと光るオーナメントがかけられた扉や木、装飾や行き交う人々の声により街全体が賑わっている。

    「そうですね、私も久方ぶりに足を運びました」

    アレックスは、隣で歩くヴィクターと一緒に、街のお祭りにやってきた。
    仕事ではなく、プライベートで。

    「あんたって祭りとか来るのか?あんまり想像つかねえんだけど」
    「おや、こう見えて私もお祭り男なのですが」
    「こう見えて…ってむしろどこをどう見たらお祭り男に見えるんだよ」

    本当かどうかは疑わしいが、このお祭りを紹介してきて誘ったのはヴィクターのほうなので、賑やかな場が苦手ということだけはなさそうだ。
    しばらく関わるうちに会話も自然とこなせるようになり、こんな冗談も交わし、なんならそれ以上もあり…いや今はここまでで止めておこう。

    「とりあえずぐるっと見て回るか」
    「では合間に気になるものがあったら細かく見るということで」
    「あと食いたいもんとかもな」
    「ふふ、そうですね」

    食べ物、花束、子どもたちに人気のおもちゃや風船、服、帽子やアクセサリー、宝石など、さまざまな物が露店に並ぶ。
    アクセサリーや宝石も一見高そうに見えるが、街の人々が手に取りやすく使い勝手の良さそうな品ばかり。
    軽食をつまんだり、音楽にのったり、いつもとは違う喧騒を2人で楽んだ。

    ===
    「ちょいとそこの色男〜」

    ヴィクターが『少し用があるのでこの辺にいてほしい』と何処かへ消えた後、ふらっと見ていた花屋の主から声をかけられた。

    「…俺か?」
    「アンタほどの色男はそうそういないよ。アンタ、恋人や気になる女の子はいるかい?」
    「え、っと…、まあ…いる…?といえばいる…?」
    「やだアンタ、顔に似合わず奥手なのかい」

    奥手というか、返事に困ったのだ。思い浮かんだ人物が女の子ではないから。

    「その子にこれをあげるといい」
    「…花束?」
    「周りをご覧、持ってる人がいっぱいいるだろう?」
    「たしかに」

    周りには、若い人から年配の人までいろんな年齢の男女が、色とりどりの花束を手に持って歩いている。
    幸せそうに、寄り添いながら。

    「恋人や気になる相手に、その人が好きな色の花束を贈るのが伝統なんだよ。アンタも誰かと来たんだろう?一束どうだい?」
    「花束か…」
    ===
    暫くしてヴィクターが戻ってきた。

    「ああ、アレックスここにいたのですね」

    賑わう道から少し外れたところにアレックスが1人座っていた。 この辺りを見て待っていてほしいとお願いした場所からは少し離れている。

    「どうかしましたかアレックス」

    先ほどかけた声にも、今の声にも返事がこない。

    「アレックス?」
    「…俺さ、あんたについて何も知らないんだな」
    「どうしたんですか?」
    「あんたを待ってる時に声かけられてさ、その時に思って…」

    一体どこの誰に何と声をかけられたのか、1人なのか複数なのか、男か女か、すべて聞きたかったのだがおそらく彼の本質はそこではない。
    ヴィクターは静かに次の言葉を待った。

    「俺、あんたの好きな色、分かんなかった」
    「……」
    「あんたを待ってる間いろいろ見ててさ、誘ってもらったしせっかくの祭りだし、お礼というかなんか、あんたにあげたかったんだけど、」
    「……」
    「何にも分かんなくて…、だから買えなかった…」

    アレックスにとってはとてもショックを受ける事だったらしい。

    「私はその気持ちだけで嬉しいですよ」
    「俺は嫌だったんだ、気持ちだけじゃなくて、何かを…」
    「それは物じゃないと駄目ですか?」

    ヴィクターはアレックスの手をとって、きれいにラッピングされた一輪の花を渡した。

    「…?」
    「この花はカーネーション。アレックス、あなたはこの花は好きですか?」
    「?」
    「色は赤。あなたの好みですか?」
    「…別に嫌いじゃねえけどカーネーションも赤も特別すきってわけでも…」
    「では私から贈られたら嫌?」
    「な…そんなことはねえよ!」
    「私も同じです、あなたからなら何だって嬉しい」
    「っ!」
    「それは物じゃなくたっていいんです。気持ちでも、言葉でも、行動だって何だって、全部嬉しいんですよ」

    ここまでいえば分かるだろうか?

    「…でも、」

    駄目だった。

    「でももし俺が『コレが好き』って言ったら、多分あんたはソレを持ってきただろ?知ってたら絶対、あんたは選んでくれるだろ?」

    いや駄目ではないかも。

    「俺も、同じ事がしたい。喜んでもらいたい」

    これは上手くいけそう。

    「私の好きな物を知りたいんですね?」

    彼の瞳がきらりと光る。
    期待を込めたまなざしで見つめてくる。

    「教えたら、もうこんな見つからないようなところに1人で行きません?」

    うんうんと頷かれる。

    「教えたら、次はあなたから『して』くれますか?」

    うんうん…ん?
    動きが止まった所で、彼を引き寄せてキスを一つ贈る。

    「んっ……ん?!??!」
    「私が好きなもの、わかりましたね?」

    少し荒療治かもしれないが、さすがにもう分かっただろう。
    私の好きなものは…

    「…き、キス?」

    分かるまでみっちり教えるべきかもしれない。
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