キニクワナイ キニシテナイ!正しい他人との距離とはどんなものだったろうか。
そもそも魔術師はあまり積極的に他人と関わることが少ない。関わりを多く持つほどに、守らなければならないものが増えるからだ。守るものが増える、と言えば聞こえがいいかもしれないが、魔術師が守るものとは血筋や神秘、伝統などであり、つまりは他者が介在する余地を与えたくないものだ。
名家の出ではない僕にも代々受け継いできたものはあるし、価値はどうあれ簡単に他者に明け渡すのは抵抗がある。そんな意識がどこかで働くのだろう、魔術師は無意識に他者との距離を保つものだと思っていた。
今まで生きていく中でそれを不自由に感じたことは無いし、もともと他人とのコミュニケーションが僕は苦手だった。他愛のない会話に応じることはあっても、それを楽しむという感覚が分からなかった。
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