708これ以上ないという程最悪で屈辱的な死に方だった。恐らく彼を知る者なら誰もが指さして嗤い、ざまあみろと嘲る、そんな最期を禪院直哉という男は迎えた。
目を開けたら廃墟とした景色が広がっていた。頽れた家屋にかつては立派だったろう面影はどこにもない。ぼっきりと折れ剥き出しの木材には所々赤い血が飛び散っていた。見ればここだけではない、いたるところに血痕がこびり付いている。思わず顔を顰め、下を向いた際に視界に端に写ったものに漸く焦点を合わせた。そこにあったのはあったのはうつ伏せに倒れ伏す男の死体だった。背中に包丁のような刃物が深々と刺さっている。
なんと無様か。他の誰でもない自分の―禪院直哉の死体を見下ろして憎々しい思いが込み上げる。
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