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    fake_ss495

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    死んだら幽霊の直哉くん

    708これ以上ないという程最悪で屈辱的な死に方だった。恐らく彼を知る者なら誰もが指さして嗤い、ざまあみろと嘲る、そんな最期を禪院直哉という男は迎えた。

    目を開けたら廃墟とした景色が広がっていた。頽れた家屋にかつては立派だったろう面影はどこにもない。ぼっきりと折れ剥き出しの木材には所々赤い血が飛び散っていた。見ればここだけではない、いたるところに血痕がこびり付いている。思わず顔を顰め、下を向いた際に視界に端に写ったものに漸く焦点を合わせた。そこにあったのはあったのはうつ伏せに倒れ伏す男の死体だった。背中に包丁のような刃物が深々と刺さっている。
    なんと無様か。他の誰でもない自分の―禪院直哉の死体を見下ろして憎々しい思いが込み上げる。
    これは自分の死体だ。馬鹿にしていた従妹との戦いに敗れ、これまた見下していた女にとどめをさされて死んだ惨めな男の姿。惨めだ。憐れなんて言葉が生温く感じるほど惨めでみっともない死に方。
    自分の死体の上に折り重なるようにして、同じように死んでいる女を見止める。女中だろう。伏せているから顔は見えないが、見えたところで誰だか分からない。余計胸糞悪くなるだけだ。
    け、と吐き捨てるとべりと折り重なる二つの死体から目を離した。いつまでもこんなところにいたくない。好き好んで自分の死体の傍に居ようとする人間はいないだろう。そうだ。死んでいるのだ。禪院直哉は死んだ。殺されたその瞬間まで体験したかの様に覚えていて、ならば今ここにいる『自分』はなんだろうか。普通―普通といっていいのか分からないが―に考えれば肉体から抜け出た魂の部分。つまり幽霊てきなもの。もしくは。
    「呪霊、か…?」
    呟いて自身の体を見下ろす。おぞましい姿、になっている訳でもなく、普通に人間の体をしていた。さっきまで見ていた男の恰好そのまんまの姿。だとしたら今の状態は幽霊になっているということだろうか。それにしては足が中途半端にしかないということもなく、体が透けて見えるということもない。自分の死体が転がってさえいなければ、生きていた頃と見た目の違和感はなかった。見える範囲では。ならばと、どこかに鏡でもないかと歩き出す。崩れた瓦礫の山の上を歩き、時折転がっている死体を足蹴にしながら徘徊する。見知った顔を見つけてはせせら笑い、目を離す頃には無表情になる。しかし殆どの建物が倒壊しており、無事なところの方が少ない。母屋の方はほぼ壊滅。離れの方が幾分かましなだけ、これを引き起こした実行犯の思想が透けて見えるというところだ。
    「自分で自分の家壊してどないすんねん」
    異様に腹立たしい。吐き出した言葉には自分でも分かるほどの怒りに満ちていて、そこに潜んだ羨望に気付いて舌打ちした。甚爾がしなかったことを甚爾の偽物がした。やってのけた。幼い頃直哉が幾度も思ったことだった。『甚爾くんならこんな家簡単にぶっ潰せるのになぁ』その突きつけられた現実が酷く腹立たしかった。
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